【コラム】富樫鉄火のグル新 第325回 バッハ会長に見せたい映画

8月は、6日(広島)、9日(長崎)、15日(敗戦)と、日本人にとってたいせつな日がつづいている。だが今年は、五輪とコロナのおかげで、例年より少々注目度が低いような気がする。
 広島といえば、先日、IOCのバッハ会長が同地を訪問した。原爆慰霊碑に献花後、原爆資料館を見学し、「五輪は平和に貢献する」とスピーチした。広島側は、一瞬、「バッハ会長は被爆地・広島に心を寄せているのでは」と思ったかもしれない。
 しかし、核廃絶は最後まで公言しなかったし、広島側が、8月6日に選手たちの黙とうを呼びかけたが、これも実現しなかった。平和記念公園一帯は、一般立ち入りが規制されたが、その警備費は、IOCも組織委員会も負担を拒否。県と市が折半で負担することになった。
 いったいバッハ会長は、なんのために広島に行ったのか、「よほどノーベル平和賞がほしいらしい」などと揶揄されていた。

 そんなに広島に興味があるなら、ぜひバッハ会長に観てもらいたい映画がある。
 『その夜(よ)は忘れない』(吉村公三郎監督、1962年、大映)である。
 わたしの大好きな映画で、劇場(名画座)だけでも5~6回は観ている。DVD鑑賞も入れたら10回以上になるだろうか。

終戦から17年、東京五輪を2年後に控えた、昭和37年の夏。
 週刊ジャーナルの記者・田宮二郎は、終戦特集の取材で、広島を訪れる。「いまなお癒えない原爆の傷跡」を訪ねる企画だ。
 ところが・・・

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