■アート・オブ・ブラス(演奏:コーリー・バンド)

イギリスのブラスバンド・ランキングで、他のバンドを大きく引き離し、ぶっちぎりの第1位をひた走るウェールズのコーリー・バンドのエンターテイメント・アルバム。2018年1月から2月にかけ、首都カーディフの聖テイロ教会で録音され、プロデューサーはアダム・ゴールドスミス、エンジニアはメリッサ・ディーがつとめている。

イギリスのバンド・コンサートの流れを汲むスタイルだが、オープ二ングをトラディッショナルなマーチで始めず、アメリカのジェームズ・スウェアリンジェンの『ヴァレロ』をサンディー・スミスがブラスバンド用に改編したものをもってくるなど、随所にフィリップ・ハーパーの流儀が感じられる。その多くがハーバーの作編曲であり、ビートルズからクラシックまで、コーリー独自のレパートリーとしてここに満載。コーリー・ファンにはたまらない。

他方、アルバムをしめくくるハワード・スネルの『ギャラリー』は、2015年11月28日にパース・コンサート・ホールで行なわれた「スコットランド・オープン選手権」のテストピース(課題)として委嘱され、その後、2017年10月14日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行なわれた「全英選手権2017」のチャンピオンシップ部門最終決勝のテストピースにも使用され、デヴィッド・キング指揮、プリッグハウス&ラストリック・バンドが優勝を飾っている。ムソルグスキーの「展覧会の絵」と同じアイデアで書かれた組曲で、6枚の絵画にインスパイアーされ、第1楽章のタイトルがスネルのオリジナルである以外、他の6つの楽章のタイトルは、実在する絵画のものがそのまま使われている。全英選手権のテストピースとして使われたときは、選手権委の指示で第4楽章がカットされたから、全楽章を収録したコーリーのこのCDにはとても意味がある。

おたのしみのソロは、トム・ハッチンスンのコルネット独奏によるドビュッシーの『亜麻色の髪の乙女』、グリン・ウィリアムズのユーフォニアム独奏による『そして死は覇者にあらず』、ヘレン・ウィリアムズのフリューゲルホーン独奏の『ドーメン』が愉しめる。

空間の大きな教会での録音だけに、サウンドは豊かに響き、全篇においてコーリーの爆裂ブラス・サウンドが愉しめる。

【データ】

・演奏:コーリー・バンド(Cory Band)
・指揮:フィリップ・ハーパー(Philip Harper)
・発売元:ドイエン (Doyen)
・発売年:2018年
・収録:2018年1月17~18日、2月7~8日、St. Teilos Church(Cardiff, Wales)
・メーカー品番:

【収録曲】

1. ヴァレロ/ジェームズ・スウェアリンジェン(arr.スミス)【2:26】
Valero/James Swearingen(arr. Sandy Smith)

2. 歌劇「スペードの女王」序曲/スッペ(arr.ブラウン)【7:40】
Pique Dame/Franz von Suppe(arr. T. Conway Brown)

3. 亜麻色の髪の乙女/ドビュッシー(arr.パークス)【2:53】
The Girl with the Flaxen Hair/Clude Debussy(arr. Peter Parkes)
コルネット:トム・ハッチンスン(Tom Hutchenson)

4. サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
/マッカートニー(arr.ハーパー)【2:10】
Sergeant Pepper’s Lonely Hearts Club Band/Paul McCartney(arr. Philip Harper)
ボーカル:スティーブン・ハムネット(Stephen Hamnett)

5. ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ
/マッカートニー(arr.ハーパー)【3:46】
With a Little Help from My Friends/Paul McCartney(arr. Philip Harper)

6. 征服への道/アルフレッド・ニューマン(arr.ハーパー)【3:36】
Captain from Castille/Alfred Newman(arr. Philip Harper)

7. ムード・インディゴ/デューク・エリントン(arr. フィリップ・ハーパー) 【4:26】
Mood Indigo/Duke Ellington(arr. Philip Harper)

8. そして死は覇者にあらず/フィリップ・ハーパー【5:08】
And Death Shall Have No Dominion/Philip Harper
ユーフォニアム:グリン・ウィリアムズ(Glyn Williams)

9. イースト・ミーツ・ウェスト/フィリップ・ハーパー【5:57】
East Meets West/Philip Harper

10. ホタ/ペーダー・カールソン(arr.クワンマ)【4:25】
Gota/Peder Karlsson(arr. Tina Kvamme)

11. ドーメン/ヤン・マグネ・フェルデ【4:38】
Domen/Jan Magne Forde
フリューゲルホーン:ヘレン・ウィリアムズ(Helen Williams)

12. タロット!トーチュアス・タロット!/アンディー・ウェアハム【5:28】
Tarot! Tortuous Tarot!/Andy Wareham

13. 四季/ヴィヴァルディ(arr.ハーパー)【3:02】
The Four Seasons/Vivaldi(arr. Philip Harper)

14. ギャラリー/ハワード・スネル【21:56】
Gallery/Howard Snell
第1楽章:エントランス Entrance【0:34】
第2楽章:ストリート・マーケット Street Market【2:12】
第3楽章:スケーターズ・ワルツ The Skater’s Waltz【3:16】
第4楽章:マーチ・バック・トゥー・キャンプ The March Back to Camp【3:53】
第5楽章:ラヴ・ストーリー Love Story【4:56】
第6楽章:カットアウト Cut-outs【3:55】
第7楽章:ランドスケイプス Landscapes【3:10】

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