最近、たいへん興味深いタイトルのCDが、オランダのBrilliant Classicsから出た。
『December 1705/Buxtehude&Bach Organ Music』(Manuel Tomadin:オルガン)である。
バッハに詳しい方だったら、タイトルの「1705年12月」に、ピンと来ただろう。
1705年、20歳の若きバッハは、ドイツ中部の町アルンシュタットで、教会オルガニストをつとめていた。ところが、あることから教会聖歌隊の生徒とトラブルになり、乱闘事件を起こしてしまう。教会上層部からこってり絞られたバッハは、不貞腐れ、同年11月、4週間の休暇を申請し、ドイツ北部の町リューベックへ旅に出てしまう。
アルンシュタットからリューベックまでは、400㎞近くある。ほぼ東京~大阪間と同じ距離だ。
いったい、バッハは、何のためにそんな遠方へ出かけたのか。
音楽作家、ひのまどかによるジュニア向け評伝『バッハ/音楽家の伝記 はじめに読む1冊』(ヤマハ・ミュージック・メディア)では、このように生き生きと記されている。後年のバッハが、息子に若いころの思い出を語る場面だ。