【コラム】富樫鉄火のグル新 第307回 書評『大河ドラマの黄金時代』

 新書による大河ドラマ解説書では、文芸評論家・小谷野敦による『大河ドラマ入門』(光文社新書、2010年1月刊)があった。第1作『花の生涯』(1963年)から、刊行時点での最新・第48作『天地人』(2009年)までが取り上げられていた。一介の大河ファンの視点で、キャスティングの良し悪しや、原作・史実との関係などを、歯に衣を着せぬタッチで述べるエッセイ風の解説書だった。

 今回出た『大河ドラマの黄金時代』(春日太一著、NHK出版新書)は、いま大人気の映画史・時代劇研究家によるドキュメントである。第1作『花の生涯』から、第29作『太平記』(1991年)までを「黄金時代」と区切って、制作と演出にあたったNHKスタッフへのインタビューで構成されている。あまり表沙汰にしたくないはずのトラブルも率直に語られており、大河ファン垂涎のエピソードが続出する(なぜ、第30作以降を取り上げないのかは、巻末に、説得力抜群の解説がある)。

 わたしは“音楽ライター”として、大河ドラマのテーマ音楽では、特に以下の3作に興味をもってきた。
①第2作『赤穂浪士』テーマ(1964年、芥川也寸志作曲)
②第18作『獅子の時代』テーマ(1980年、宇崎竜童作曲)
③第42作『武蔵 MUSAHI』テーマ(2003年、エンニオ・モリコーネ作曲)

 ①は、おそらく大河ドラマ史上、もっとも知られたテーマ曲で、いまでもバラエティや歴史番組で「赤穂浪士」「忠臣蔵」の話題になると、流れることがある。

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