恒例の「東京アニメアワードフェスティバル2021」(TAAF2021)が終わった(3月12~15日、東京・池袋の新文芸坐ほかにて)。
わたしは、いつも国際コンペ部門(長編4本、短編30本前後)を楽しみにしている。アニメーションに、これほど多彩な題材、テーマ、表現方法、音楽があるのかと、毎年、感動するばかりだ。
今年の長編コンペ部門グランプリには、『ジョセップ』(原題:JOSEP/フランス・スペイン他合作/2020年/監督:オーレル)が選出された。
内容は――
「1939年2月、スペイン共和派の人々は、フランコの独裁政権からフランスに逃れてきていた。フランス政府は収容所を建設して難民たちをそこに閉じ込め、劣悪な衛生環境のうえ、水や食料がほとんど手に入らない状況に追い込んだ。収容所の中で、有刺鉄線で隔てられながらも、二人の男が友達になる。一人はフランス側の看守、もう一人はフランコ政権と戦うイラストレーターのジョセップ・バルトリ(1910年バルセロナ生~1995年ニューヨーク没)だった」(TAAFのオフィシャル紹介文)
映画は、現代のフランスで、年老いて余命いくばくもない上記の看守が、病床で、孫にジョセップの思い出を語る構成になっている。
現代部分は2Dのフル・アニメだが、回想部分は色数や動きを抑えたイラスト絵物語のようなタッチで描かれる(消えゆく老人の記憶のようだ)。
しかし、「フランコ独裁政権を逃れてフランスに流入したスペイン難民」の話は、ヨーロッパの近現代史に詳しくないと、そう誰でも知っていることではないと思う。
それをこの映画は、現代と結んだ構成で描いているのだが、肝心の若者(看守の孫)のキャラクターが十分に描き込まれていないので、アイディア抜群のラストシーンが生きていないように感じた。