現在の朝ドラ『おちょやん』は、浪花千栄子(1907~1973)がモデルだという。
NHKの番組サイトによれば、「明治の末、大阪の南河内の貧しい家に生まれたヒロイン」が、「さまざまなトラブルを乗り越えて」「ラジオドラマで、12人の子どもを抱える母親役を演じ」「大きな反響を呼び、10年にわたる人気番組となった」とある。
そして、「『大阪のお母さん』として絶大な人気を獲得し、名実ともに上方を代表する女優となっていく」そうだ。
わたしは時々、見逃し配信で見ていたのだが、相変わらずのドタバタと、同じようなパターンの展開で、すぐに飽きてしまった。
上記の「ラジオドラマ」とは、花菱アチャコと共演した『お父さんはお人好し』のことで、わたしの子ども時代、まだ放送されていた(1954~65年放送)。だがわたしには、映画版のほうが印象が強い。浪花が演じた子だくさんの気丈な母親像は、たしかに頼もしい「大阪のお母さん」だった(東宝版の四女=環三千世のかわいらしさ、知人の娘=安西郷子の美しさも忘れがたい)。
そのほか、いま書店に行くと、浪花千栄子の関連本が多く出ており、「昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優」「大阪のお母さん 浪花千栄子の生涯」「浪花千栄子の人生劇場」などの惹句が目につく。
だが、浪花千栄子は、「大阪のお母さん」以前に、稀代の「怪女優」だった。