【コラム】富樫鉄火のグル新 第297回 柳の下のガイドブックたち(1)

 仕事柄、本や音楽のガイドブックにはよく目を通す。最近気になったガイドブックに関するあれこれを、何回かにわたって綴る。

 近年、もっとも売れたのは、『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』(デイヴィッド・S・キダーほか著、小林朋則訳/文響社)だろう。原著シリーズは累計100万部、邦訳シリーズも累計60万部を突破しているらしい。
 これは、月曜日から順に、各曜日ごと「歴史」「文学」「視覚芸術」「科学」「音楽」「哲学」「宗教」の7分野を、1項目1ぺージに割り振って構成された、「教養」というよりは「雑学」コラム集である。
 ジャンルごとに書き手がちがうせいか、統一性はあまりなくて、たとえば「文学」などは、突然、ジェイムス・ジョイスの『ユリシーズ』(1922年)からはじまるので驚く。2週目がヘミングウェイ。シェイクスピアは37週目に登場し、47週目には彼の「ソネット18番」だけが独立して解説されるなど、かなり書き手の嗜好が反映されている。ちなみに、最終第52週が、ジョン・キーツの『ギリシアの壺に寄す頌歌』(1819年)なのも、なんともいえない構成だ。

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