■アウトレイジャス・フォーチュン(演奏:ロイヤル・ノーザン音楽カレッジWO)

2017年9~10月、英マンチェスターのロイヤル・ノーザン音楽カレッジで録音された「吹奏楽グレート・ブリティッシュ・ミュージック」シリーズの第23集で、その後プロデューサーのスタン・キッチンが体調をくずし、2018年1月10日に亡くなったため、CD化は中断。その間、エンジニアのリチャード・スコットは、編集、マスタリングまでを終えていたが、彼も2019年8月4日に死去。今回のCD化は、2人を惜しんだ作曲家のマーティン・エレビーが制作資金を拠出したことで実現した。アルバムは、キッチンとスコットの追憶のために献げられている。

アルバム・タイトルのナイジェル・クラークの『アウトレイジャス・フォーチュン』は、一般に“生きるべきか、死ぬべきか~”で知られるシェイクスピアの「ハムレット」の有名なセリフ“The slings and arrows of outrageous fortune, Or to take arms against a sea of troubles, And by opposing end them.”からの引用で、日本語では『暴虐な運命』とか『残忍な運命』といったように訳される。ブラック・ダイク・バンドのソロ・トロンボーン奏者ブレット・ベイカーと女優ナタリー・グレイディ、米ミドル・テネシー・ステート大学の指揮者リード・トーマスに献じられ、その顔合わせでアメリカで初演。3人はこの録音でも顔を揃えている。

マーティン・エレビーがイギリスのクリスマス・キャロルをもとに書いた『イングリッシュ・キャロルの小交響曲』とこの曲は、アルバム中でもとくにライヴ感あふれる圧倒的なパフォーマンスが愉しめる!

シエナ・ウィンド・オーケストラの定期演奏会のために委嘱されたフィリップ・スパークの『ドラゴンの年(2017)』(新バージョン)が初のセッション・レコーディングで収録されているのも注目したい。1985年のウィンド・オリジナル版との変化のディティールが克明に捉えられた録音で、ロイヤル・ノーザン音楽カレッジ・ウィンド・オーケストラもエネルギッシュなパフォーマンスを繰り広げている。

この他、アルバムには、ロイヤル・マリーンズに委嘱されたエレビーの『アンフィビオシティ(海陸両面で)』と、ロブ・ウィッフィンがさまざまな“ライト感覚”を3つの楽章で捉えた組曲『ライト・ミュージック』が収録されているが、アルバム全体を通し、演奏者の高いモチベーションとサウンドの心地よさが光っている。

■吹奏楽グレート・ブリティッシュ・ミュージック Vol.23
:アウトレイジャス・フォーチュン

演奏:ロイヤル・ノーザン音楽カレッジWO
Outrageous Fortune:Great British Music for Wind Band Vol.23
http://www.bandpower.shop/shopdetail/000000000795/

【データ】

・演奏:ロイヤル・ノーザン音楽カレッジ・ウィンド・オーケストラ
 (Royal Northen College of Music Wind Orchestra)
・指揮:リード・トーマス(Reed Thomas)1 / マーク・ヘロン (Mark Heron) 2 / ジェフリー・マシューズ (Geffrey Mathews) 3 / アレグザンダー・ウェブ(Alexander Web)4 / クラーク・ランデル (Clark Rundell) 5
・発売元:ポリフォニック(Polyphonic)
・発売年:2020年
・収録:2017年9~10月、ロイヤル・ノーザン音楽カレッジ、マンチェスター(UK)
・メーカー品番:

【収録曲】

  1. アウトレイジャス・フォーチュン/ナイジェル・クラーク【24:16】
    Outrageous Fortune/Nigel Clarke
    トロンボーン:ブレット・ベイカー(Brett Baker)
    アクトレス(Actress):ナタリー・グレイディ(Natalie Grady)
  2. ドラゴンの年(2017)/フィリップ・スパーク【13:50】
    The Year of the Dragon(2017)/Philip Sparke
  3. アンフィビオシティ/マーティン・エレビー【9:03】
    Amphibiosity/Martin Ellerby
  4. ライト・ミュージック/ロブ・ウィッフィン【12:17】
    Light Music/Rob Wiffin
  5. イングリッシュ・キャロルの小交響曲/マーティン・エレビー【16:16】
    A Little Symphony of English Carols/Martin Ellerby
    コーラス(Choir):カントス・チェンバー・クワイアー(Kantos Chamber Choir)
    小序曲(酒宴)【1:37】
    Miniature Overture(Wassail Song)
    冬のバラード(真冬の雪の中を見てごらん)【2:53】
    Winter Ballad(See Amid the Winter’s Snow)
    インテルメッツォ(ひいらぎとつたは)【1:26】
    Intermezzo(The Holly and the Ivy)
    第一間奏(コヴェントリー・キャロル)【1:25】
    First Interlude(Coventry Carol)
    炉辺の前で戯れ(よのひと忘るな)【1:39】
    Fireside Frolic(God Rest You Merry, Gentlemen)
    第二間奏(まぶねの中で)【2:40】
    Second Interlude(Away in a Manger)
    物思い(木枯らしの風 吹きたけり)【2:25】
    Reverie(In the Bleak Mid-winter)
    フェスティヴ・フィナーレ(ディンドン空高く)【2:09】
    Festive Finale(Ding Dong! Merrily on High)

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