【コラム】富樫鉄火のグル新 第293回 ヴィヴァルディを聴く映画

 1979年、ヴィヴァルディの音楽を使用したアメリカ映画が3本公開された。しかも、どれもたいへんな名作だった。

『リトル・ロマンス』(ジョージ・ロイ・ヒル監督/1979/米) 
 名優ローレンス・オリヴィエが出演。ダイアン・レインの映画デビュー作でもある(撮影時13歳、かわいい!←いま55歳)。音楽担当はジョルジュ・ドルリューで(本作で、アカデミー作曲賞受賞)、《室内協奏曲》ニ長調RV93をアレンジして流していた。

『クレイマー、クレイマー』(ロバート・ベントン監督/1979/米)  
 アカデミー賞5部門受賞の名作。妻に家出されたダスティン・ホフマンが、男手ひとつで5歳の息子を育てる奮闘記。《マンドリン協奏曲》ハ長調RV425が上品に、うまく使われていた。

『オール・ザット・ジャズ』(ボブ・フォッシー監督/1979/米) 
 カンヌ映画祭最高賞受賞。ブロードウェイの名振付師による自伝的作品。毎朝、シャワーを浴びながら《協奏曲》ト長調〈アラ・ルスティカ〉RV 151を流しては、「さあみなさん、ショータイムです!」と疲れきった自らを鼓舞する(わたしは、この曲を大学のオンデマンド授業のテーマ曲に使用した)。

 ほかにも、たとえば『八月の狂詩曲』(黒澤明監督/1991/日本)では、《スターバト・マーテル》RV 621が流れた。さほど有名な曲ではなかったのだが、この映画が契機で注目を浴びた。使用された音源は、クリストファー・ホグウッド指揮/エンシェント室内管弦楽団/ジェイムズ・ボウマン(カウンター・テナー)のDecca盤(1975年録音)で、いまでも名盤として知られている。

 かようにヴィヴァルディが流れる映画は多いのだが、ひさびさに決定打が登場したのでご紹介したい。
 『燃ゆる女の肖像』(セリーヌ・シアマ監督/2019/仏)だ。

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