【コラム】富樫鉄火のグル新 第292回 筒美京平、半歩立ち止まる。

 初秋に、さほど深刻ではなかったものの、少々、体調を崩した。
 わたしは、10余年前に受けた食道(噴門)癌手術の後遺症のようなものを抱えている。普段はクスリでおさえており、何ということもないのだが、数年に一度、調子が悪くなる。そのたびに、短期入院もした(今回は、そこまでには、至らなかったが)。
 昨年秋には、再発と思われる腎臓腫瘍の切除手術も受けた(悪性ではなかったが)。

 そんなせいで、力が入らない日々を過ごしていると、ただでさえコロナ禍で、多くの仕事がうまく進まないところへ、著名人の逝去のニュースがつづき、気が滅入ってきた。
 その後、体調もほぼ回復したので、当コラムを再開しようと考えていた矢先でもあったので、出鼻をくじかれたような気分だった。

桑田二郎(漫画家)、エンニオ・モリコーネ(映画音楽作曲家)、弘田三枝子(歌手)、外山滋比古(言語学者)、濱野彰親(挿絵画家)、須藤甚一郎(目黒区議、元芸能レポーター)、渡哲也(俳優)、豊竹嶋太夫(義太夫)、かぜ耕士(作詞家)、井出孫六(作家)、近藤等則(ジャズ・トランぺッター)、大城立裕(作家)……かつて仕事でお世話になったり、敬愛してきたひとの訃報は、つらい。

 なかでも、作曲家・筒美京平の逝去には、特にガックリ来た。
 (その後、中村泰士、なかにし礼の訃報までがつづいた)

 筒美作品の魅力は「半歩立ち止まる旋律」にあると、わたしは、むかしから思っていた。

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