【コラム】富樫鉄火のグル新 第291回 薄氷を踏む歌舞伎座

 8月に入って、歌舞伎座が公演を再開させた。
 日本を代表する大劇場が、定例公演を再開させるとあって、演劇界・興行界は、固唾をのんで見守っている。
 わたしも、お盆の最中、2日にわけて、行ってきた。
 
 本来は、3幕ワンセット(ほぼ3~4時間)で、昼夜2公演おこなっていた。
 今回は、1幕1時間で、入れ替え4部制になった(第2部《棒しばり》は、45分)。観客はもちろん、役者も裏方も、幕ごとに入れ替えとなった。
 入り口で検温、手の消毒。切符は自分でもぎって、半券を箱に入れる。
 席は市松模様(1席おき)で、幕見席や桟敷席、花道の両側(3~4席)は販売されない。よって1,808席ある劇場だが、売られるのは半分以下の823席しかない。
 客席は各部ごとに完全入れ替えで、そのたびに、外へ出なければならない。幕間によっては、2時間近く空くこともあり、つづけての見物は、その間の過ごし方が難しい(近隣の喫茶店などは、のきなみ満席になる)。

 上演中、客席後方ドアや、桟敷席のドア・カーテンは「全開」である。上演中、晴海通りの車の音が、かすかに聞こえてくる。桟敷席の後ろは、ロビーの壁が丸見えだ。
 大向こう、掛け声は禁止。客席の飲食や会話もお控えくださいといわれる。
 イヤホンガイド、字幕器などのレンタルも、ない。
 筋書きも売っておらず、簡単なあらすじを書いたペーパーが置いてある。
 舞台写真(ブロマイド)も、場内では売っていない。
 食堂や売店はすべて休止。ペットボトル飲料のみ、売っている。
 1階の喫茶店と手前の土産売場は営業していたが、劇場内部から直接入れず、いったん外に出てから入る。とにかく劇場内に、ひとが滞留しないことが優先されている様子だった。
 (ただし、東銀座駅から直結している地下の「木挽町広場」は全面営業中で、呼び込みなどで、すごい賑わいだった。舞台写真は、ここで売っており、長蛇の列である)

 かくして、どういう観劇になるか。

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