■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」07

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第7回 うちトレ「楽器の特色を探る~音色と倍音、そして音の形~」

皆さん、辛抱して外出しない「ステイホーム」をしていてくれてありがとうございます。コロナとの闘いは長期戦の様相を呈していますが、今努力しているからこそ「笑顔で吹奏楽部活動」が出来る日はきます。引き続き気を緩めることとなく、一人一人が感染拡大防止対策を実行していきましょう。

吹奏楽は、「吹いて、奏でて、楽しい」のですが、日ごろの基礎練習は楽器の演奏テクニックの向上がメインになっていると思います。私は知識理論や奏者自身の健康も加味したトータル的なものが「基礎」と考えています。楽器の面白さ可能性や音楽の奥深さを知り、もっと吹奏楽そして音楽を楽しむためにも、「知識、体調、技術」の3つを基礎としてみてください。

今回のうちトレは、「楽器の特色」について考えます。

1.音色と倍音
ピアノの音、管楽器の音、弦楽器の音ないろいろ楽器の音があります。同じ高さ、大きさの音なのに、違った音に聞こえるのは、「音色(おんしょく・ねいろ)」の違いからで、それぞれが特有の「波形」を持っているからです。しかし、音色(波形)は大きさ(振幅)や高さ(周波数)と違って、簡単に数字で表すことはできません。
普段聞いている音は、いろいろな振動数すなわち周波数の正弦波(サイン波)を重ね合わせてできています。
例えば、2つの周波数の違う正弦波を重ね合わせると、違った波形ができます。(モデル化してあります)

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楽器の音は、いくつもの正弦波を重ね合わせてできています。その正弦波を分析すると、基準となる振動数(周波数)の音と振動数が2倍、3倍…、つまり倍音が重なり合っていることがわかります。楽器ごとに音色が違って聞こえるのは、この倍音がどの様な割合で含まれているかということです。

【ちょっと寄り道】(飛ばして読んでも構いません)
音声の /ア/ の場合を例にお話すると、振幅と周波数の違った正弦波が重なり波形ができます。次に周波数分解を行い、周波数ごとに正弦波をア1、ア2、ア3、…と取り出します。そしてさらに、FFT(高速フーリエ変換)アナライザ―という機器を使って、周波数分析して、周波数スペクトルとして表示すると、f1、f2、f3…と特定の周波数が出ていることがわかります。

音声は、声帯の振動により声道や口腔を通るときに、「ア」「イ」などの五母音がきまります。これは、口の形と舌の位置を変えて共振の特性を変えているから「ア」や「イ」と固有の音声に特性されて聞こえます。この振幅スペクトルのピークである共振周波数をフォルマント周波数といい、低い方から順に第1フォルマント(f1)、第2フォルマント(f2)、 第3フォルマント(f3)・・・といいます。特にf1とf2の値で「ア」「イ」など母音の発声に重要な役割を担います。
管楽器の発音の際にいろいろな発音を使ってと言われますが、実際には口を開け閉めできませんので、口の中で舌の位置や動きを変えることで対応すると思います。

音色の話に戻って・・・楽器の音は、複雑な波形を持っていて、それぞれが独特の響きのある「音色」を奏でています。この複雑な波形には、高周波成分(基準音程より高い音程)が含まれていて、これを「倍音」といい、この含まれ方や表方で現れ楽器の特色が決まります。

楽器の波形分析もFFTアナライザ―を用います。周波数分析をすると、基準周波数(音程)の値に強いスペクトルが現れ、その他に高い周波数にもスペクトルが現れます。純音(正弦波)は、基準周波数をfとすると、スペクトルはfのところにだけ1本線が立ちます(音叉がこれにあたります。楽器ではオカリナの音色が似ています)。フルートは純音に比べると波形にいくつかの山が見られますがなだらかなので、基準音程fの強いスペクトラム以外は、レベルが低く高周波成分がほとんど見られません。ですから柔らかく澄んだ美しい音色が得られます。バイオリンは波形が複雑にギザギザしていて、基準音程f以外に高周波成分でもスペクトルが出現していて、多くの倍音を含んでいることが特徴です。透き通った美しさ中にも華やかさも兼ね備えた音色が得られます。(楽器は音域や奏法によっていろいろな音色が出せます。これが楽器の面白さであり魅力です。その魅力を探るために毎日の演奏テクニック向上の基礎練習をして挑戦しているわけですね。)

2.音の形
音色と倍音で用いた周波数分析は、音を解析する有効な手段ですが、実際に音楽で演奏される一つの音は、始まりと終わりがあり0.1秒から数秒程度と短く、理想的な周期波形ではないので無限に繰り返されると仮定して分析結果を出しています。そのため失ってしまった情報も出てきます。

ピアノやギターでは、弦をハンマーで叩いたり、指で弾いたりして音を出します。弦の振動は最初が一番大きく、すぐに小さく減衰していきます。これに対し、オルガンや管楽器、弦楽器(弓での奏法)は、音を持続させ減衰しないようにすることができます。この発音開始から発音停止までの時間と振幅(音量)を表したものが音のエンベロープすなわち「音の形」となります。

・音の立ち上がり(アタック):発音から最大振幅(音量)になるまでの時間。
・音の芯・響き(コア):最大音量から音が安定して持続している時間。ディケイとサスティンにさらに分けられます。
・音の処理(リリース):発音停止から音量が0になるまでの時間。
の3つの時間と音量の関係(エンベロープ)の「音の形」も各楽器の特色を識別するために重要な役割をもっています。

3.まとめ
楽器音の固有の特色は、音色と倍音の関係や「音の立ち上がり(アタック)・芯(コア)・処理(リリース)」の音の形から決定されます。特に管楽器では音を出したり、止めたりすることをより明確化するために、舌を使い、「TA、TI、TU、TE、TO」など子音と母音を組み合わせて発音する「タンギング」というテクニックが必要となります。

【タンギングについて】
管楽器の発生と停止には息の流れを制御する役目を舌で行う「タンギング」をします。

「TA、TI、TU、TE、TO」など子音と母音を組み合わせて発音することは先にお話しました。

例えば「ターン(TA―N)」と発音します。

・音の立ち上がり(アタック)は「T」子音。音程と音量を決定する要因になります。
・音の芯・響き(コア)は「A」母音。音色を決めます。
・音の処理(リリース)は「N」。余韻をつけます。

この一連の舌の動きを明確にして言葉を言うイメージで息を制御するという事が大切です。(母音を発音する時、I、E、A、O、Uと口の中で舌の位置が下がってくるイメージになりますので、子音はどの母音と組み合わせるかで舌先の位置がきまります。) 

また、ジャズ、ポップスでは、「ダーッ」と余韻を付けずに音を止めます。そして発音は「D」や「B」など濁音を使います。「ダバダバダ」という具合です。

さあ、「うちトレ」…いろいろな発音を声にだして(小さな声でもいいよ)息の流れと舌の動きを確かめながら「舌の筋トレ」スタートです。私は、吹奏楽の魅力の一つに「響き(Sound)に緊張感」があると思っています。音の発音(アタック)と処理(リリース)には、舌で息をコントロールするために生まれる特色です。舌の筋トレは必要ですね。

今まで楽曲を吹けるようにならないと…と余裕なく部活動していたかもしれません。余裕のある今だからこそ、理論も考えながら身体に無駄な力をいれることなく理想の音を出せるようにしてみてはいかがでしょうか? 身体に力が入ったり、音量がオーバーフローすると音は崩れます。頑張れば頑張るほど、無理をすれば無理をするほど良い演奏につながりません。

Q: では如何に楽器の特色を出し、(音の三要素の)音程を安定させ、音量の幅を広げ、音色を豊かにして、指揮者の要求や楽曲のイメージを表現し、合奏のアインザッツの揃える…などなど課題目標をクリアしていくか?

A: それは、曲が吹けるようになることだけでなく、音を出す理論を知り、プロの音(今は音源)を聴き、自分の楽器の理想の音を研究してイメージを持つことです。

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