■五十嵐先生、教えてくれっチョ!【特別篇】「コロナなんかに負けないぞ!」 今やろう!「笑顔で吹奏楽活動を再スタートする日のために」05

Text:五十嵐 清(東京清和吹奏楽団常任指揮者/元東京消防庁音楽隊長)

第5回 家で出来るトレーニング(うちトレ)

皆さん、新型コロナウイルス感染症拡大防止の緊急事態宣言が出されています。「自粛疲れ」なんてことも言われていますが、今やることは、「外に出ない、人と接触しない」ことです。今をしっかりしていかないと未来はありません。時間を区切ってメリハリのある生活スケジュールを決めて、コロナなんかには絶対に負けずに活動を再スタートする日のために、気を緩めることなく、手洗いうがいを実行して心身ともに健康で乗り切っていきましょう。
第5回目は、「うちトレ」。家で出来るトレーニングです。
前回まで、音のしくみや音の鳴る原理を物理的な面からアプローチしたので、今回読んでもらえるかとても心配です。
「吸って吐いて、振れて音が鳴る」という事は、管楽器を演奏するうえでとても重要なファクター(要素)ですので、もう一度。
「リラックスして、たくさんの空気を体内(肺)に取り込み、身体全体を使うイメージで息として意識して吐き出す。振動源となる唇やリードの振動を妨げないように息を通過させて音を出す」

姿勢(フォーム)・呼吸(ブレス)・アンブシュア

息のコントロール(スピード/圧力/量/方向/連続性など)

同一の振動源(同じ波形)

音程が合う ・ 音量が出る ・ 音色が統一される

豊かな響きになり、遠くに鳴り響く

この流れを是非とも理解して、自分に合う楽器演奏スタイルを見つけてください。

やってみて、こんなアイデアが浮かんだ、実行してみて発見があった。少しわからないことがあったなど、このQ&Aコーナー「教えてくれっチョ!」に投稿してください。皆さんで共有していきましょう。

さて、今回は「家で出来るトレーニング、“うちトレ”」です。
楽器が手元に無い!家では楽器は吹けない!なんていう人でも大丈夫です。
先ずは実行。トライしてみてください。
1.口輪筋ストレッチ
最近、大声で話したり、笑ったりしていないと思うので、口を開けることをしなくなっていませんか。
とういうことは、口の周りにある筋肉「口輪筋」を使わなくなっているかもしれません。
管楽器の演奏にはこの「口輪筋」が振動源、音の源として重要な役割をしていることは、前回お話しました。
さあ。口輪筋ストレッチです。それぞれ自分のペースでキープしてください。
1)口を閉じてゆっくりと口角を上に引き上げて笑顔を作ります。このときに、目も大きく見開いて、視線を上に向けます。(ミッキーマウスのスマイルのイメージ)

2)頬を大きく膨らまして唇を前に突き出す。(“あっぷっぷ”での変顔イメージ)
3)頬をへこませて唇をつぼめて思いっきり前に突き出す。(“ひょっとこ”のイメージ)
4)「ワー オー」と(小さく)言いながら、口を大きくゆっくりと動かします。
5)「い・え・あ・お・う」と発音するように大きくゆっくり口を動かして1サイクル。

普段は学校などでやっている、挨拶や返事、友達との話し、笑ったりして口を動かして声を出すことも管楽器の練習になっていたのですね。
家でも挨拶したり笑ったりしてはどうでしょうか?

2.金管楽器(バズィング)
しつこいようですが、金管楽器の振動源は「唇」です。
1)バズィング練習
実際に唇を振動させて、①~④を意識して音をだしましょう。
①やや微笑むイメージで息が通れるアパアシュアが出来るような適度に唇を閉じる。
②上下の唇は(努めて)フラットになるよう歯やあごの位置を工夫する。
③口角を固定する。
ポイント→この時“ぽっぺた”の裏(内)側と“歯”を「張り付ける」ようにすると、口の中の圧力が一定に保たれ息が安定して出せます。
④唇中央部がリラックスして自由に振動できるようにしておく。
⑤意識した息を安定に送り込む。
(注:意識というのは力を入れるという事ではありません。こんな音が出したいなと自分の気持ちを込めることと思ってください)

1)特定の音程(なんの音をだすか)を目指さないで、唇の振動で音を鳴らしてみよう。
  舌は使わず、息だけです。(ノータンギング)
姿勢(フォーム)、呼吸(ブレス)、アンブシュアのベストを見つけてください。
  もし音が出なかったら、焦らずに唇周辺だけでなく、顔や身体に力が入っているところをリラックスさせてトライしてください。
2)音が出たアンブシュアに、マウスピースを当ててマウスピースバズィングをおこなう。
マウスピースの持ち方の注意
ホルン以外の人は左手(ホルンは右手)の親指と人差し指の2本で、マウスピースの先端から1/3くらいの(楽器に装着した時にできた線があると思います)ところを軽く持つ。物を握って口に近づけると、口の中に入れたくなってしまう習慣があります。(小さいとき何かを握ると口に運んでいませんでしたか?)
3)実音F(チューニングB♭の4度下)の音程を出してみよう。
  音の出だしはあまり気にせず、Fの音を丁寧に出してみましょう。
4)感じが掴めたら、Fを基準に半音ずつ音程を下げていきます。(リップスラー)
(テンポや長さは自分で決めて無理のなく、「吸って吐いて、振動して音が鳴る」を実行してください)
F→E、F→E♭、F→D、~B♭まで。
5)B♭(チューニング音)の音程をだして、
B♭→A、B♭→A♭、B♭→G、~オクターブ下のB♭まで。
出来れば毎日ですが、時間は長くではなく少しずつ。

3.木管楽器(アンブシュアのチェック)
ここではフルートとクラリネットのみアンブシュアチェックをお話します。
1)フルート:頭部管のみで、「A」の音。
2)クラリネットB♭管:マウスピースにリードをセットして、オとウを同時に発音するような口の形でマウスピースを下から口の中に挿入するように、「F#」の音。
(この時、高音でやや大きめの音がするので、家の中ではチェックするだけの短時間のみの音出しにしてください。)

では、木管楽器の人は何をすればいい?
木管は楽曲の音符数が多く、読譜力と正確な運指を要求されるので、スケール全調(長調、短調とも)、クロマチックスケール各音からスタートとアルペジオを、
①音名で歌いながらシャドー運指をつけて、
②レガートタンギングで音程を頭の中で歌いながら、やはりシャドー運指で。
というような、シャドートレーニングをお勧めします。

早く早く早く、部活動が再開できて楽器を吹きたいところですが、今は我慢、我慢。
今、部活動が休みで、しばらく楽器を吹いていないからこそ、唇を酷使していないこの時、
楽曲の練習に追われていないこの時だからこそ、
基礎を再確認して、正しい奏法を再チェックするチャンスです。
「楽器を思う存分に奏でる」その日のために、いろいろな工夫やアイデアをだして
今できることからやっておきましょう。
是非とも、“うちトレ”を一日の生活スケジュールに、少しだけ組み込んでみてください。

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