【コラム】富樫鉄火のグル新 第277回 第1回大島渚賞

 わたしが初めて観た大島渚の映画は『ユンボギの日記』(1965)だった。1970年、小学校6年生のときだった。中野公会堂で、山本薩夫監督の記録映画『ベトナム』(1969)と2本立てだった。反戦団体による自主上映会だったと思う。原作本が、学校の図書室にあったので、題名だけは、前から知っていた。親友のオカモトくんと2人で行った。もちろん、自主的に行ったのではなく、担任の先生に薦められたのだ(当時の中野区は革新区政で、日教組全盛時代だった)。先生から無料入場券のようなものをもらったような気がする。

 これは、朝鮮戦争後の韓国における、貧困少年の日常を描く、フォト・ドキュメントである。小松方正のナレーションが強烈で、何度となく「イ・ユンボギ、君は10歳、韓国の少年」と執拗に述べられる。それが脳内にこびりついてしまい、「オカモトヒロト、君は12歳、中野の少年」などとからかいながら帰ったものだ。
 しかし、なにぶん全編がモノクロ写真静止画なので、小学生にはつらく、観ていて「なんだ、動かない映画なのか」と、がっかりした記憶がある

 ところが、大人になって、関連資料を読んで驚いた。あの写真は、

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