【コラム】富樫鉄火のグル新 第265回 イングランドの”隠れ切支丹”

 吹奏楽に長く携わっている方なら、ゴードン・ジェイコブ(1895~1984)の名をご存じだと思う。イギリスの作編曲家で、王立音楽院の教授を長くつとめた教育者でもあった。
 彼の名が広まったのは、学生時代に作曲(編曲)した、《ウィリアム・バード組曲》だった。当初は管弦楽用に書かれたが、のちに吹奏楽版となり、世界中で演奏されるようになった。(うろ覚えだが、フレデリック・フェネル指揮のマーキュリー盤が初の商業録音だったのでは?)
 これは、ルネサンス期のイギリスの作曲家、ウィリアム・バード(1543?~1623)がヴァージナル(当時のイングランドで流行した、小型チェンバロ)のために書いた曲を6曲抜粋し、編曲したものだ。たいへんうまくまとめられており(特に、管打楽器=吹奏楽の魅力が十二分に引き出されている)、編曲というよりは、再創造と呼ぶにふさわしい。ホルストの組曲などと並んで、教育テキスト的な楽曲としても知られている。
 そしてもうひとつ、本作の功績は、ウィリアム・バードの名を、世界中に、特に吹奏楽に携わる若い人たちに知らしめたことである。

 ウィリアム・バードは、“ブリタニア音楽の父”などと呼ばれた大作曲家である。

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