【コラム】富樫鉄火のグル新 第264回 書評『劇場建築とイス』

 本書は、日本の劇場建築を、「イス」(客席)の視点を取り入れながら振り返るユニークな写真集で、コンサート・ゴーアーには、たまらない一冊である。

 ところが、カバーにも中トビラにも、一切、著者名も監修者名もない珍しい本で、いったい、誰が書いた(まとめた)本なのかと、奥付を見ると「企画・監修/コトブキシーティング・アーカイブ」とある(著者名なしで、取次を通ったのだろうか?)。
 不勉強ながら初耳の会社だったので、「コトブキシーティング」社のHPを見ると、1914(大正3)年創業の老舗で、「ホール・劇場・学校・スタジアム・映画館など、公共施設のイスやカプセルベットの製造・販売」の会社だという。要するに、日本中の劇場のイスを開発・製作納入している「イス会社」なのだ。創業100年の際に、社内の記録写真をアーカイブ化したので、それらを集めたのが、本書らしい。「その多くは、客席イスの納品時に記録として撮影されたもの」とあるので、ここに紹介された約60の劇場・ホールのイスは、すべて、同社の製品なのだろう。

 収録劇場は、竣工順に4つのグループに分けて構成されている。

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