【コラム】富樫鉄火のグル新 第260回 佐渡&シエナの《エル・カミーノ・レアル》

(前回よりつづく)
 今回の佐渡裕&シエナ・ウインド・オーケストラのコンサート・ツアーの曲目で驚いたのは、最終曲、アルフレッド・リード作曲の《エル・カミーノ・レアル》だった。
 実は、意外だったのだが、佐渡&シエナによる同曲演奏は、実演でも録音でも、今回が初めてなのである(他指揮者による演奏・録音はある)。
 
 《エル・カミーノ・レアル》とは、直訳すると「王の道」を意味する。かつてのスペインやポルトガルが、世界中に進出していった、そのルートのことだ。曲は、そんな怒涛の世界進出のイメージを幻想的に描いている。
 ただ、「世界進出」といえば聞こえはいいが、実態は「侵略」だったとも、よくいわれる。現に、『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(岩波文庫)などを読むと、あまりの残虐ぶりに、吐き気を催しかねない(そもそもこの本は、南米現地に赴いた聖職者ラス・カサスが、これ以上、先住民を虐殺しないよう、母国スペインの皇太子に直訴した報告書である)。

 だが、「王の道」は、至福ももたらしてくれている。カリフォルニア・ワインなども、そのひとつだ。
 1542年、ポルトガル人のホアン・ロドリゲス・カブリヨが、現在のカリフォルニア州の最南西端、サンディエゴのあたりに漂着し、「王の道」のスタート地点を切り拓いた。
 1769年には、すでにスペインに支配されていた、お隣のメキシコから修道士たちが入り込み、道沿いに修道院を建設しながら、北へ北へと進んでいった。彼らは、土地土地でブドウを栽培し、キリストの血=ワインを生産することも忘れなかった。
 現在のカリフォルニアでワイン生産が盛んなのは、これがルーツなのである。

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