■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第102話 NHK – 二大ウィンドオーケストラの競演

▲プログラム – アルカイック・ブラスフェスティバル(1993年2月11-14日、アルカイックホール、兵庫県尼崎)

▲演奏曲目 – 尼崎市吹奏楽団(2/11)

▲演奏曲目 – 大阪市音楽団(2/12)

▲演奏曲目 – シエナウィンドオーケストラ(2/13)

▲演奏曲目 – 東京佼成ウィンドオーケストラ(2/14)

▲チラシ – アルカイック・ブラスフェスティバル(1993年2月11-14日)

1992年(平成4年)8月16日(日)、午後3時から6時30分までの3時間30分、NHK-FMは、「生放送!ブラスFMオール・リクエスト」という特別番組をオンエアした!

番組ディレクターは、梶吉洋一郎さん。出演者は、筆者のほか、アナウンサーの坪郷佳英子さん、ゲストにサックス奏者のMALTAさんという顔ぶれだった。

この番組は、NHKが“久しぶり”に放送する吹奏楽番組だったためだろうか、はたまた、放送される曲のすべてがリクエストで構成され、唯一、事前アナウンスされたヨハン・デメイ(Johan de Meij)の交響曲第1番『指輪物語(The Lord of the Rings)』(NHKが収録した木村吉宏指揮、大阪市音楽団による日本初演ライヴ)以外、放送当日までどんな曲が流れるのかまるでわからないというワクワク感があったためだろうか。ナピゲートしたこちらが感じた以上に、お茶の間の音楽ファンに強いインパクトを残したようだ。(参照:《第58話 NHK 生放送!ブラスFMオール・リクエスト》《第64話 デメイ「指輪物語」日本初CD制作秘話》

そして、NHKには、放送終了後、全国各地の放送局やサービスセンターを通じて問い合わせが殺到した!

伝え聞くところによると、現代吹奏楽に対する基礎知識やマーチ以外のレコードやCDをライブラリーに持たないNHKの音楽制作スタッフは、少し気の毒に思えるほど、応対に右往左往した模様だ。まあ、放送で使用した“指輪物語”以外の音源ソースが、すべて“筆者の私物”だったから、ある程度仕方なかったかも知れないが…。

結果、音楽制作の部内で、まるで“念仏”か“合言葉”のように密かに囁かれ始めたのが、『梶吉の吹奏楽には気をつけろ!』だった!

“自分たちの勉強不足を棚に上げて、何言ってるんだ!”とは内心思ったが、NHKには“学閥”のようなものがあって、吹奏楽の作曲家や作品はまるで相手にされていなかったので、この騒ぎについては、“認識を新たにするきっかけになればいいので、まあいいか。”くらいに軽く受け流すことにした。

しかし、この放送で一気に認知されることになる“大阪市音楽団”の名もまるで知らなかった人たちだから、他は推して知るべしである。梶吉さんは、提案を上げる際、まず、市音の歴史から説明しないといけなかった。それでも、放送当日のオンエア寸前まで、NHKが東京ではなく大阪の楽団をとりあげることに対して、局内では異論や雑音が渦巻いていたが,,,,。

残念ながら、これは事実である。

ともかく、常々『吹奏楽の定時番組をなんとか復活させたい。』とアツく語っていた氏が、その具体的な第一歩として立ち上げた番組「生放送!ブラスFMオール・リクエスト」は、局内の予想をくつがえす大成功を収めた。

そして、その半年後、氏と筆者が再びタッグを組んで送り出した吹奏楽特番第2弾(NHK-FM)が、1993年(平成5年)3月20日(土)、午前9時から11時50分の2時間50分にわたって放送された「二大ウィンドオーケストラの競演」だった。

この番組は、兵庫県尼崎市のアルカイックホールが“開館10周年記念”の一環で企画した「アルカイック・ブラスフェスティバル」(1993年2月11日~2月14日)が契機となって立案されたものだった。

フェスティバルは、つぎのような日程で組まれていた。

・2/11(祝)14:00開演 尼崎市吹奏楽団
(指揮:木村吉宏、辻井清幸)

・2/12(金)18:30開演 大阪市音楽団
(指揮:金 洪才)

・2/13(土)18:30開演 シエナウィンドオーケストラ
(指揮:福田一雄)

・2/14(日)14:00開演 東京佼成ウインドオーケストラ
(指揮:フレデリック・フェネル)

アルカイックホールをホームとする「尼崎市吹奏楽団」による“ウエルカムコンサート”に始まり、「東京佼成ウインドオーケストラ」の“フェアウェルコンサート”まで、同じホールで4日連続の吹奏楽のコンサートをやろうというアグレッシブな催しだ。

こんな試みは、前代未聞だ!

チラシには“日本初!吹奏楽夢のジョイント”というコピーが踊っていた。

また、同時開催で“楽器展”なども開かれ、ホール周辺では、9月開業予定の“都ホテル ニューアルカイック”や、11月開館予定の多目的ホール“アルカイックホール・オクト”の準備も進められているなど、いろいろな動きが多角的に行なわれていた。

実は、この催しには、いずれ施設が整う尼崎を中核とする大きなイベントを作りあげたいとする、ある将来構想への布石としての意味合いも込められていた。当時、尼崎には、シカゴのミッドウェスト・クリニックのようなイベントを自主開催するという構想があったのだ。

それはさておき、電話による恒例の情報交換で、筆者からこの連続コンサートの話を聞いた梶吉さんは、すぐ企画を立ち上げた。

タイトルは、なんとも刺激的な「二大ウィンドオーケストラの競演」!

4つのコンサートから、東西の両雄、2月12日の“市音”と2月14日の“東京佼成”を選んで収録し、一本の番組を作ろうというものだった。

先に演奏がある市音のプログラムは、以下のようなものだった。

・フェスティヴァル・ヴァリエーション
(クロード・T・スミス)

・アイヌ民話によるソプラノ、語り手と吹奏楽のための音楽物語
「ピカタカムイとオキクルミ」
 
(大栗 裕)

・アマゾニア(本邦初演)
(ヤン・ヴァンデルロースト)

・メキシコの祭り
(H・オーウェン・リード)

日米欧のオリジナル作品だけで構成される“市音”らしいプログラムだ!

もう一方の“東京佼成”のプログラムは、以下のようだった。

・ファンタジア ト長調(BWV 572)
(ヨハン・セバスティアン・バッハ / リチャード・フランコ・ゴールドマン、ロバート・リースト編)

・ワーグナーの“ポラッチ”の主題による変奏曲
(アルフレッド・リード)

・風変りな店
(ジュゼッペ・ロッシーニ、オットリーノ・レスピーギ / ダン・ゴットフリー編)

・交響曲第5番、作品47
(ドミトリー・ショスタコーヴィチ / 伊藤康英編)

こちらも、指揮者フレデリック・フェネル(Frederick Fennell)と当時の佼成が好んでとりあげた定番プログラムだった。

結果的に、市音の『アマゾニア』と佼成の『交響曲第5番』第4楽章で勢い余ったアクシデントがあったものの、収録が入ったことで、両本番は白熱のライヴとなった。

何よりも、同じポイントから同じスタッフによって録られた両楽団のガチンコ勝負、そしてキャラクターの違いは、両者が組んだ本格的なプログラムとともに、リスナーを魅了した。

番組は、市音団長の木村さんとフェネルのインタビューをまじえて構成。

クロージングにフェネルがアンコールでとりあげた

・主よ、人の望みの喜びよ(BWV.147)
(ヨハン・セバスティアン・バッハ / アルフレッド・リード編)

を組み入れて放送された。

プロ同士のガチンコは、さすがに聴きごたえ満点!

やっぱりライブはいい!

番組は、東京と大阪をホームに活躍する2つのプロ楽団の本格交流が始まる1つのきっかけとなった。

また、東京佼成と市音を表して“東西の二大ウィンドオーケストラ”とするコピーも、この時に生まれた。

グッジョブ(Good Job)だ!梶吉さん!

▲大阪市音楽団(1993年2月12日)(許諾により「バンドピープル」1993年4月号(八重洲出版)から転載)

▲東京佼成WO(1993年2月14日)(同)

▲▼番組作成シート – 二大ウィンドオーケストラの競演

▲讀賣新聞、平成5年3月20日(土)、朝刊、25面

▲「バンドピープル」1993年4月号(八重洲出版)

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