
学生時代、山田稔『スカトロジア 糞尿譚』(講談社文庫、1977/原著は未来社刊、1966)を読んで仰天した。オシッコ、ウンコ、垂れ流し、オナラ、トイレ……について、西洋文学でどう扱われているかを集めて考察した、すさまじい文芸エッセイだった(本書で、わたしは、スウィフトの『ガリヴァー旅行記』が世界最高の“スカトロ文学”であることを知った)。
知性と品のある文章も忘れられない。著者・山田稔(1930~)は、仏文学者である。バルザック、ゾラ、フローベールなどの翻訳者として知られる。岩波文庫の名著『フランス短篇傑作選』は、このひとの訳編である(実に面白いセレクションなので、一読をお薦めする)。
だがもうひとつ、山田稔は短篇小説作家、そして名エッセイストでもある。『コーマルタン界隈』(河出書房新社、1981/現・編集工房ノア)で芸術選奨文部大臣賞を、『ああ、そうかね』(京都新聞出版センター、1996)で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞している。
そんな山田の自選集の刊行が始まった(『山田稔自選集1』編集工房ノア)。
さすがに何重ものフィルターを通過してきたような名エッセイばかりで、わたしが講師をしているエッセイ教室でもさっそくテキストにしたほどだ。