【コラム】富樫鉄火のグル新 第250回 佐伯茂樹さんと牛友カレー

 古楽器演奏家で、音楽評論・楽器研究家の佐伯茂樹さんが亡くなった(享年58)。
 
 佐伯さんとわたしは、ほぼ同年だった。雑司ヶ谷の居酒屋Nで、よく呑んだ。
 もう10年くらい前。呑んでいると、「ベートーヴェン《運命》冒頭のジャジャジャジャーンが、鳥の鳴き声だって、ご存知でしたか」という。さらに「《田園》は、死がモチーフの縁起悪い曲なんですよ」など、次々に独自の“解釈”を披露してくれる。
 あまりに面白かったので「その種の話を集めて新書にしよう」と盛り上がった。さっそく、ほかのネタもいくつか聞き出して、《名曲に秘められた暗号~《運命》は鳥の鳴き声だった!》と題して、仕事先の企画会議に提案し、GOサインが出た。
 ところが、やがて佐伯さんから原稿がとどきはじめると、少々、困ってしまった。確かに、酒場で聞いたような、面白い話もあった。ラヴェル《ボレロ》におけるトロンボーンやサクソフォンのソロの裏話など、目からウロコが落ちた。

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