
▲「第50回日本吹奏楽指導者クリニック」プログラム

▲「アメリカ海兵隊バンドによるスーザマーチの演奏法」プログラム
2019年(令和元年)5月、《アメリカ合衆国政府派遣音楽使節》として“大統領直属”アメリカ海兵隊バンド(“The President’s Own” United States Maine Band)が初来日した。
そのステータスや活動については、《第85話 U.S.マリン・バンドがやってきた!》や《第86話 U.S.マリン・バンド200周年》でお話したとおりだが、さすがは“1798年以来アメリカの音楽を演奏している(Playing America’s Music Since 1798)”とコピーで謳うバンドだ。
横浜、金沢、浜松、岩国の各地で行なわれたコンサートは、いずこもたいへん大きな反響を呼び、多くの音楽ファンにすばらしい音楽的感動と印象を残していった。
映像もいろいろと残されている。
テレビでは、7月16日(火)午前5時00分から5時55分まで、NHKのBSプレミアム《クラシック倶楽部》「アメリカ海兵隊バンド 日本公演」という番組名でオン・エア。5月16日に本多の森ホール(石川県金沢市)で収録された「かなざわ国際音楽祭2019 Vol.1 アメリカ海兵隊軍楽隊コンサート」から、以下の10曲が放送された。
・アメリカ合衆国国歌“星条旗”
(National Anthem“The Star Spangled Banner”)
・日本国歌“君が代”
(Kimigayo)
・ジョン・フィリップ・スーザ:行進曲“海を越える握手”
(John Philip Sousa:March“Hands Across the Sea”)
・ロバート・E・ジェイガー:エスプリ・ドゥ・コーア
(Robert E. Jager:Esprit de Corps)
・ケヴィン・ヴァルツィック:イロァ・イロァ
(Kevin Walczyk:Eloi, Eloi)
・スティーヴン・ブラ編:ルイ・アームストロングへのトリビュート
(Arr. Stephen Bulla:“Louis Armstrong” Tribute)
(トランペット:ダニエル・オーバン Daniel Oban)
・マイケル・ギルバートソン:「ユーソニアン・ドゥエリングズ」から
“第2楽章:タリアセン・ウエスト”“第3楽章:落水荘”
(Michael Gilbertson:Usonian Dwellings – “2nd Mov.:Taliesin West”&“3rd Mov.:Fallingwater”)
・ルイージ・アルディーティ、D・パターソン編:くちづけ
(Luigi Arditi、trans. D. Paterson:Il Bacio)
(メゾソプラノ:サラ・シェフィールド Sara Sheffield)
・レナード・バーンスタイン、ジェイソン・フェティッグ編:ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」から“サムホエア”
(Leonard Bernstein, arr. Jason Fettig:Somewhere, from “West Side Story”)
(メゾソプラノ:サラ・シェフィールド Sara Sheffield)
・ジョン・フィリップ・スーザ:行進曲「星条旗よ永遠なれ」
(John Philip Sousa:March“The Stars and Stripes Forever”)
横浜(5/15)と浜松(5/17、5/18)では、来場者限定頒布という触れ込みで、DVDやCDのための録画収録や録音が行なわれた。
もちろん、早速、購入の手続きをとる!!
(私事ながら、筆者の手元にあるレコードやCD、DVDの類いは、演奏家や作曲家などから特にプレゼントされたものを除き、99.99%、自費で購入したものだ。コピーやサンプルを求めたりする行為など、まったくもって論外と考えているからだ!)
一方、チケットが完売となった岩国(5/19)では、AFN Iwakuni(米軍放送網 American Forces Network 岩国局)がテレビ・クルーを入れ、コンサートの一部とディレクターのジェイソン・K・フェティッグ大佐(Colonel Jason K. Fettig, Director)へのインタビューをまとめた「U.S. Marine Band makes history in Japan(アメリカ海兵隊バンドは、日本でヒストリーを作る)」という公式動画をYouTubeにアップロードした。
これで、2019年の“大統領直属”アメリカ海兵隊バンド初来日は、すべてのホールでの演奏が、何らかのかたちで映像で収録されたことになる。
まさに映像文化花開く21世紀ならではの話!!歴史的な事件だった。
しかし、その後、ホンモノの事件が勃発する!
突然、アメリカ海兵隊バンドと陸上自衛隊中央音楽隊がジョイント・コンサートを行なった横浜のDVDが販売中止になったのだ!
『この度、ご購入いただきました2019年5月15日開催 横浜開港祭 ザブラスクルーズ特別公演「誠」の商品が販売中止となってしまいましたこと、深くお詫び申し上げます。販売中止の理由としましては、主催者側(横浜開港祭 ザブラスクルーズ実行委員会)と防衛省との間での DVD販売に話し合いに食い違いが生じたため、販売を中止せざるを得ない状況になってしまったとのことです。弊社といたしましても、主催者より収録・販売の依頼をされた状況のため、話し合いの詳しい内容については存じ上げておりません。….(後略)….。』(原文ママ)
販売元のプラーム横浜から封書で送られてきた【横浜開港祭特別公演「誠」販売中止のお詫びとお願い】には、そう書かれていた。
(これは事件だ!!)
6月6日、早速、プラーム横浜に電話で事情を問い合わせる。
きっと急な対応で追われているのだろう。電話口の応対に出た担当者は、『かなりのお客さまの御注文がありまして…。』と、控えめのトーンで質問に答えてくれた。その丁寧な応対ぶりから、逆に真相については何も知らされていないことをうかがい知ることができた。
(何があったかは知らないが、これは“上”の問題だな!)
同時に、プラーム横浜は、将来にわたり、販売の機会は二度と訪れないとも断言した。
たいへん残念ながら、同じ日に同じステージで同じマイクとカメラが捉えた日米両バンドのキャラクターの違いを音楽的に比較したり、考察できるチャンスは、こうして永遠に失われてしまった。日米友好のためにコンサートを行なった両バンドにとっても、さぞかし残念なことだったろう。
本当になんともならなかったのだろうか!
日本ならではの事情があったのだろうか!
いろいな想いが駆けめぐるが、残念ながら真相はよくわからなかった。
しかしながら、その後届いた浜松の第50回日本吹奏楽指導者クリニックの会場で収録された2本のDVD-R(「50周年記念スペシャルコンサート」「アメリカ海兵隊バンドによるスーザマーチの演奏法」)と、ほぼ同じ頃に購入したDVD「MASTERPIECES FOR SYMPHONIC BAND PROGRAMS 1-3」(Naxos、2.110589、リリース:2018年)は、やや沈んでいた筆者のハートにパッと明かりを灯し、一気に高揚した気分にさせてくれた。
すべて手元に置くべきアーカイブだが、中でも印象深かったのは、フェティッグ大佐が講師となったナマ演奏つきの「アメリカ海兵隊バンドによるスーザマーチの演奏法」だ!
アメリカのナショナル・マーチ『星条旗よ永遠なれ(The Stars and Stripes Forever)』で始まったこのレクチャーは、『ライフル連隊(Rhe Rifle Regiment)』、『忠誠(Semper Fidelis)』、『ワシントン・ポスト(The Washington Post)』、『マンハッタン・ビーチ(Manhattan Beach)』、『エル・カピタン(El Capitan)』、『外交官(The Diplomat)』、『弾丸と銃剣(Bullets and Bayonets)』という、おなじみのマーチの部分や全体を使ったとてもわかりやすいもの。
マーチ・ファンでなくても愉しめる進行で、最後に、アメリカン・バンドマスターズ・アソシエーション(A.B.A.)の名誉会員である秋山紀夫さんを客演指揮に迎えて、『サウンド・オフ(Sound Off)』でしめるあたり、演出も心憎かった!
蛇足ながら、フェティッグ大佐の英語もとてもわかりやすい。
とにかく、このバンドの第17代リーダーだったスーザがのこした音楽的遺産がとてつもなく大きいものだったこと、そして、間違いなくそれが21世紀の今に伝えられていることを再認識させるレクチャーだった。
他に追従を許さない固有のレパートリーをもつバンドは強い!
そして、さすがは、220年を超える歴史!!
初来日したアメリカ海兵隊バンド、それは、間違いなく世界第一級の楽団だった!

▲横浜開港祭 来場記念限定頒布お申込みのご案内

▲ CD-R – 2019 JAPAN BAND CLINIC 50周年記念スペシャルコンサート(CAFUA、CACJ-1901、2019年)

▲ DVD-R – 第50回日本吹奏楽指導者クリニック 23 アメリカ海兵隊バンドによるスーザマーチの演奏法(日本パルス、2019年)

▲DVD-R – 第50回日本吹奏楽指導者クリニック 30 50周年記念スペシャルコンサート(日本パルス、2019年)

▲DVD – MASTERPIECES FOR SYMPHONIC BAND PROGRAMS 1-3(Naxos、2.110589、2018年)