
▲アメリカ海兵隊バンド、日本語つきパンフレット

▲ 第28代ディレクター、ジェイソン・K・フェティッグ大佐

▲日本ツアー・ステッカー

▲CD – アメリカ海兵隊バンド セレクション(Power House、PHCD-1001~5
『あれ?ヒグチさん!!どないしはりました?えらいとこでお会いしますね!』
待ち合わせのため、先を急いでいた筆者に思いがけなく掛かったバリバリの大阪弁の方向を見ると、そこには、全日本学生吹奏楽連盟理事長の溝邊典紀さんと千修吹奏楽団常任指揮者の井上 学さんのふたりが笑顔で立っていた。
ふたりも面喰っている様子だったが、近年、なぜか大阪から鎌倉に移った井上さんはさておき、奈良の溝邊さんや大阪の筆者が遠く離れた横浜のホール近くで出くわすことなど、まずあり得ない。
2019年(令和元年)5月15日(水)、押し寄せる人の波でごった返す横浜みなとみらい大ホールの入り口近くで起こった“怪事件”である。
この日、みなとみらいホールでは、午後6時30分から、“U.S. マリン・バンド”、即ち“アメリカ合衆国政府派遣音楽使節”として初来日した“大統領直属”アメリカ海兵隊バンド(“The President’s Own” United States Maine Band)を、陸上自衛隊中央音楽隊がホストとなり、「横浜開港祭 日米友好チャリティー吹奏楽コンサート ザ ブラスクルーズ2019 ~特別公演~ 誠」というジョイント・コンサートが開かれることになっていた。
溝邊さんと井上さんは、そのリハーサルを見学した後、ちょうどホールから出てきたところだった。
一方、筆者が待ち合わせた相手は、Band Powerの名物編集長、鎌田小太郎(コタロー)さん。
これに遡ること20年前の2000年に、U.S.マリン・バンド供給のオリジナル録音を活用した5枚組CDボックス「アメリカ海兵隊バンド セレクション(The President’s Own United States Maine Band Selection)」(Power House、PHCD-1001~5)の国内リリースを企画し、“U.S.マリン”の存在を広く知らしめた中心的人物だ。氏の熱意がなかったら、この企画は成り立たなかった。
そして、この日、コタローさんと筆者は、“横浜開港祭 ザ ブラスクルーズ”実行委員会会長の小松俊之さんから直接コンサートに招待されていた。
『そういうことだったんですね。』と互いに事情がわかった関西組3人は、開場まで少し余裕があることを確認し、『お茶でも行きますか?』という溝邊さんに従って近くのファストフード店へ。井上さんがコタローさんへ携帯で居場所を知らせて、合流を促してもらうことになった。
そこでワイワイガヤガヤ騒いでいると、偶然横を通られた秋山紀夫さんや日本スーザ協会の会員などからつぎつぎ声がかかる。みんな声がでかいので、結構目立っている様子だ。その後も、元東京佼成ウインドオーケストラのユーフォニアム奏者、三浦 徹さんや洗足学園音楽大学の山本武雄さんなどと挨拶をかわす。アメリカまで行かないと聴けない“マリン”を日本のホールでナマで聴けるとあって、さすがに今日は吹奏楽関係の知人が多い。
実は、マリン・バンドがアメリカ国外に出てコンサートを行なうのは、2001年、スイスへの演奏旅行以来という、超レア・ケースだったのだ!
話を本題に戻そう。
初来日となったアメリカ海兵隊バンドは、この日の横浜みなとみらいを皮切りに、以下の4会場のコンサートおよびレクチャーに出演した。
・5/15(水)
横浜開港祭 日米友好チャリティー吹奏楽コンサート ザ ブラスクルーズ2019 ~特別公演~ 誠
(於:横浜みなとみらい大ホール、開演:18:30)
・5/16(木)
かなざわ国際音楽祭2019 Vol.1 アメリカ海兵隊軍楽隊コンサート
(於:石川県金沢の本多の森ホール、開演:19:00)
・5/17(金)
第50回 日本吹奏楽指導者クリニック 2019 50周年記念スペシャル・コンサート
(於:アクトシティ浜松大ホール、開演:18:00)
・5/18(土)
第50回 日本吹奏楽指導者クリニック 2019 スーザマーチの演奏法
(於:アクトシティ浜松大ホール、開演:9:00)
・5/19(日)
Viva! Music! 音の祭典 アメリカ海兵隊軍楽隊
(於:山口県民文化ホールいわくに シンフォニア岩国コンサートホール、開演:14:00)
バンドの歴史を紐解くと、創設は、1798年7月11日。第2代アメリカ大統領ジョン・アダムズ(在職:1797年~1801年)が、バンド設立の議会法に署名したときだ。以来、“プレジデンツ・オウン(大統領直属)”という、その名のステータスにふさわしく、外国要人も訪れるホワイトハウスで必要とされる音楽すべてを提供する任務を担っている。
現在のホワイトハウスの主は、ドナルド・トランプ第45代アメリカ大統領(在職:2017~)。
みなとみらいで配布されていた日本語つきのパンフレットにも、以下の文言が誇らしげに印刷されている。
“THE MISSION OF THE UNITED STATES MARINE BAND IS TO PROVIDE MUSIC FOR THE PRESIDENT OF THE UNITED STATES AND THE COMMANDANT OF THE MARINE CORPS.”
“「大統領直属」アメリカ海兵隊バンドの使命は、アメリカ大統領と海兵隊司令官のために演奏することである。”
この日のマリン・バンドの指揮者は、2014年7月に就任したジェイソン・K・フェティッグ大佐(Colonel Jason K. Fettig, Director)。ホワイトハウスの音楽アドバイザーであり、毎年500回以上の演奏を行なうこのバンドの第28代ディレクターだ。
そして、歴代ディレクターの中で最も有名なのが、このバンドの演奏を飛躍的に高め、1880年から1892年まで指揮をつとめた第17代リーダーのジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa、1854~1932)である。(当時は“Director”ではなく“Leader”と呼称された)
言うまでもなく、この日のプログラムにも入っていた「星条旗よ永遠なれ(The Stars and Stripes Forever)」(1886)の作曲者だ。
そして、1887年5月14日、ペンシルベニア州フィラデルフィアで初演されたこのマーチは、初演からほぼ100年後にあたる1987年12月11日、第40代アメリカ大統領ロナルド・レーガン(在職:1981~1985、1985~1989)の署名によって、議会で“アメリカ合衆国ナショナル・マーチ”(国の公式行進曲)に制定された。
この事実は、日本では意外と報じられていない。
みなとみらいでは、日米の両バンドは、両国の友好のため、ともにすばらしいプログラムを組んできたが、少し大袈裟な表現が許されるなら、この日、来場した聴衆の多くは、“マリン・バンド”が演奏するこの曲を目当てにこのホールに詰めかけたのかも知れない。
本家本元の演奏を聴きたいと!
かつて、“マリン・バンド”を客演し、自作の「ダンス・ムーブメント」を指揮した友人のイギリス人作曲家フィリップ・スパーク(Philip Sparke)が、このバンドを評してこう言っていた。
“どのセクションも最高のチェンバー・オーケストラに匹敵するすばらしいバンドだ!”
スコアの隅々まで浮かび上がるようなクリアさと清潔なハーモニー、そして各セクションの見事な統一感!使う道具(楽器)にも、強いこだわりが見て取れた。
もちろん、お目当ての「星条旗よ永遠なれ」もファンタスティック!!
以前にアメリカで聴いたときも、この日も“マリン・バンド”は“マリン・バンド”だった!
大阪に戻った後、一人でそんな感慨に耽っていたとき、浜松のクリニックでナマ演奏を聴いた人からもつぎつぎと連絡が入った。
“本当に感動しました。みんな30,000円(クリニック参加費)が安かったと言っていますよ!”
“中学生のときに聴いた“ギャルド”のレコード以来の感動でした!”
“我々は、長い年月をかけて何やってたんですかね!”
“スーザのマーチがあんなにすばらしいなんて!”
みんな興奮していた!!
聞くところによると、浜松のクリニックでは、例年、空席が目立つコンサート翌日朝一番の講座「スーザマーチの演奏法」(5/18)も超満員だったという。岩国もチケットが完売となった。
初来日したU.S. マリン・バンド!
それは、我々にすばらしい感動を残していってくれた!

▲チラシ – 横浜開港祭 日米友好チャリティー吹奏楽コンサート ザ ブラスクルーズ2019

▲プログラム – 横浜開港祭 日米友好チャリティー吹奏楽コンサート ザ ブラスクルーズ2019

▲曲目 – 日米友好チャリティー吹奏楽コンサート(横浜)

▲ 曲目 – 日本吹奏楽指導者クリニック 2019 50周年記念スペシャル・コンサート(浜松)

▲チラシ – かなざわ国際音楽祭2019 Vol.1 アメリカ海兵隊軍楽隊コンサート(金沢)

▲チラシ – Viva! Music! 音の祭典 アメリカ海兵隊軍楽隊(岩国)

▲LP – John Philip Sousa Vol.1(非売品、CFS-2722)]

▲CFS-2722 – A面レーベル

▲CFS-2722 – B面レーベル

▲LP – John Philip Sousa Vol.2(非売品、CFS-2723)

▲CFS-2723 – A面レーベル

▲CFS-2723 – B面レーベル

▲LP – John Philip Sousa Vol.3(非売品、CFS-2724)

▲CFS-2724 – A面レーベル

▲CFS-2724 – B面レーベル
「■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第85話 U.S.マリン・バンドがやってきた!」への2件のフィードバック