【コラム】富樫鉄火のグル新 第240回 《4分33秒》

 わたしは、ジョン・ケージ(1912~92)の名曲《4分33秒》(1952年初演)の実演を、2回、聴いたことがある。
 どちらも、黛敏郎時代の「題名のない音楽会」だった(何度か書いているが、わたしは、中学以来、20歳代までの十数年間、渋谷公会堂での公開録画のほとんどに、通っていた)。
 1回目は、ピアノ独奏版、2回目はオーケストラ版だった。
 ピアノ版のときは、たしか、ジョン・ケージの特集で、ピアニストが何の前触れもなく登場し、演奏を開始した。
 やがて渋谷公会堂の客席は、次第にざわつきはじめ、低い笑い声が聴こえはじめた。
 演奏終了後、まばらな拍手がおき、ピアニストが下がると、司会の黛敏郎が登場し、「ただいまの4分33秒の間、みなさんは、様々な笑い声やざわめき、雑音を聴いたことでしょう。それこそが、ケージが聴かせたかった、偶然の音楽なのです」といったような主旨の解説をした(2回目のオーケストラ版のときは、もうかなり有名になっていて、客席はお笑い状態だった)。

 4月20日に、神奈川フィルハーモニー管弦楽団が、定期演奏会で、この曲を取り上げた(指揮・太田弦)【公式ライヴ映像あり】。よほど行こうかと思ったのだが、仕事の都合で時間が空かず、てっきり忘れていた。

【この続きを読む】

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください