■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第81話 栄光のギャルド

▲LP – 栄光のギャルド/吹奏楽名演集(Angel(東芝)、AA-8302)

▲ Angel(東芝)、AA-8302 – A面レーベル

▲Angel(東芝)、AA-8302 – B面レーベル

第2次世界大戦後、日本の吹奏楽にもっとも大きな影響を与えた来日吹奏楽団は、1961年(昭和36年)11月に初来日したフランスの“ギャルド・レピュブリケーヌ交響吹奏楽団”(公演名)だった。

第22話「ギャルド1961の伝説」でお話したように、そのとき、彼らが演奏したプログラムは、ヨハン・セバスチャン・バッハの『トッカータとフーガ 二短調』」をはじめ、フランツ・リストの『ハンガリー狂詩曲第2番』、フランツ・フォン・スッペの喜歌劇『詩人と農夫』序曲、モーリス・ラヴェルの『ダフニスとクロエ』第2組曲、オットリーノ・レスピーギの交響詩『ローマの松』といったクラシックの名曲のほか、フローラン・シュミットの『ディオニソスの祭り』という高度なオリジナル曲などで組まれ、当時の日本の吹奏楽の水準からみると、まるで別世界のように感じられるものだった!

その後、半世紀以上のときが流れ、それらの曲がまるで日本の吹奏楽の定番レパートリーであるかのように演奏される姿をみると、このとき“ギャルド”からもたらされた音楽的インパクトがどれほど大きいものだったかがとてもよく理解できる。

“ギャルド”は、それまでの“マーチ”一辺倒だった日本の音楽ファンの吹奏楽に対する概念を根本から変えてしまうほどの大きな衝撃をもたらしたわけだ。

レコードは、日本コロムビアと東芝音楽工業から登場した!!

ところが、1960年代に国内発売されたレコードは、1枚を除き、すべて“マーチ・アルバム”だった。

第79話「ギャルドとコロムビア・レーベル」などでお話したように、当時のレコード会社の吹奏楽に対する捉え方(常識)が“吹奏楽=マーチ”にしっかり固定されていたので、それも仕方なかったかもしれない。

唯一例外の1枚は、来日時の楽長フランソワ=ジュリアン・ブラン(Francois-Julien Brun, Chef de la Musique et du Orchestre)から『どうしても残しておきたい曲が3つあるが、録音してくれるかな?』という録音当日の突然のリクエストで東芝がレコーディングした「ギャルド名演集」(Angel(東芝)、5SA-5003)だった。

25センチLPとして発売されたこのアルバムには、日本公演でも好評を博したクロード・ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』、ジョルジュ・ビゼーの『アルルの女』組曲第2番から“ファランドール”、フローラン・シュミットの『ディオニソスの祭り』が収録されていた。

公演をナマや放送で聴いたリスナーが最も期待したアルバム内容だけに、1962年7月にリリースされるや、爆発的人気を集めてアッという間に完売。ところが、その後は、すぐに再プレスされることもなく、次にこれらの曲目が入ったアルバムがリリースされるのは、7年後の1969年9月まで待たねばならなかった。

レコード会社として、マーチ以外の吹奏楽レコードのリリースに慎重になっていた様子が見え隠れする。

同時に録音された6曲の日本のマーチ入りの17センチEP「ギャルド・レピュブリケーヌ日本マーチ集」(Angel(東芝)、YDA-5001)がレコード番号を変えて何度も発売されたのに比べ、あまりにも扱いが対照的だった。

もっとも、1950年代のフランス盤の収録曲にもマーチは多かった。

戦前から音楽執筆を行われ、“ギャルド”とも親交が深かった赤松文治さんの東京・永田町のご自宅に何度か押しかけた際、不躾にもこのことについて質問したことがある。

すると、苦笑しながらも、氏は『ブランの頃には、月に1度のペースでラジオ放送のための録音が行われていたんで、放送やコンサートで演奏するようなレパートリーまで、敢えてレコード化する必要はなかったんだよ。』と話された。

“なるほど。それなら、レコードなんか必要ないな”と思ったのを記憶している。

その後、他に放送録音があったことについては、氏の労作「栄光のギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団」(自費出版 / 1988 / 制作:音楽之友社 / 第24話「ギャルド1961外伝」参照)の中でも触れられている。

とは言うものの、やっぱりコンサート・レパートリーもレコードで聴いてみたい!

1967年10月、そんな音楽ファンの期待に応えるアルバムがついにフランスで録音され、その後、フランスEMIのパテ・マルコーニ・レーベルからリリースされた。

■KIOSQUE A MUSIQUE
(仏Pathe Marconi(EMI)、CPTPM 130572 / ステレオ / 30cm LP)
(Matrix:YPTX 1246 / YPTX 1247)

“RECITAL CLASSIQUE(リサイタル・クラシック)”というサブ・タイトルがあるこのアルバムには、何度でも聴きたい、つぎの4曲が収録されていた。

トッカータとフーガ 二短調(ヨハン・セバスチャン・バッハ)
Orchestration:フランソワ=ジュリアン・ブラン

ハンガリー狂詩曲 第2番(フランツ・リスト)
Orchestration:フランソワ=ジュリアン・ブラン

歌劇「泥棒かささぎ」序曲(ジョアッキーノ・ロッシーニ)
Transcription:レイモン・リシャール

喜歌劇「詩人と農夫」序曲(フランツ・フォン・スッペ)
Transcription:レイモン・リシャール

すべて日本公演で人気を博した曲で、指揮者も、来日当時の楽長ブラン!!

日本の音楽ファンが待ち浴びたこのアルバムは、録音翌年の1968年5月新譜として、東芝音楽工業のエンジェル・レーベルからもリリースされた。

■栄光のギャルド/吹奏楽名演集
GLORIOUS GARDE REPUBLICAINE
(Angel(東芝)、AA-8302) / ステレオ / 30cm LP)
(Matrix:YPTX 1246 / YPTX 1247)

マーチ以外のフランス録音の登場に、日本中のファンが興奮に包まれ、アルバムは大ヒット!

その大成功は、日本のレコード各社に、“ひょっとすると、マーチ以外の吹奏楽レコードも売れる”かも知れないと認識させるきっかけになり、気を良くした東芝も、完売後、文字通りのお蔵入り状態になっていたシュミットの『ディオ二ソスの祭り』ほかの来日時の録音を再登場させることになった。

一方、ブランの定年(1969年6月18日)を間近かに控えたフランスでも、アルバムは、人気を博してロングセラーとなってプレスを重ねた。その後、1972年にも、カップリングを変更して再リリースされている。

調べると、フランス、日本以外でも、アメリカやカナダでもリリースされていたことがわかった。

1枚のレコードがマーケットの空気をガラリと変え、その国のレパートリーにまで大きな影響を及ぼすことになる、ものすごいパワーを秘めたアルバムが、かつて吹奏楽の世界にも存在した!

“栄光のギャルド”は、正しくそんなアルバムだった!!

▲ LP – KIOSQUE A MUSIQUE(仏Pathe Marconi(EMI)、CPTPM 130572)

▲ 仏Pathe Marconi(EMI)、CPTPM 130572 – 初期プレス盤 – A面レーベル

▲仏Pathe Marconi(EMI)、CPTPM 130572 – 初期プレス盤 – B面レーベル

▲仏Pathe Marconi(EMI)、CPTPM 130572 – 中期プレス盤 – A面レーベル

▲仏Pathe Marconi(EMI)、CPTPM 130572 – 中期プレス盤 – B面レーベル

▲仏Pathe Marconi(EMI)、CPTPM 130572 – 後期プレス盤 – A面レーベル

▲仏Pathe Marconi(EMI)、CPTPM 130572 – 後期プレス盤 – B面レーベル

▲LP – KIOSQUE A MUSIQUE(仏LA VOIX DE SON MAITRE(EMI)、C 053-12034)(1972)

▲仏LA VOIX DE SON MAITRE(EMI)、C 053-12034 – A面レーべル

▲仏LA VOIX DE SON MAITRE(EMI)、C 053-12034 – B面レーべル

▲LP – THE BANDSTAND(米Connoiseur Society、40-5664)

▲米Connoiseur Society、40-5664 – A面レーベル

▲米Connoiseur Society、40-5664 – B面レーベル

▲LP – CONCERT PROMENADE(カナダSelect、S-398.136)

▲カナダSelect、S-398.136 – A面レーベル

▲カナダSelect、S-398.136 – B面レーベル

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