【コラム】富樫鉄火のグル新 第236回 よみがえるサリエリ(中)

(前回よりつづく)
 わたしに、「作曲家」サリエリの魅力を教えてくれたのは、脚本家・作家の山崎巌さん(1929~1997)だった。
 巌(がん)さんは、日活のベテラン脚本家だった。小林旭主演の「渡り鳥」シリーズを筆頭に、『赤いハンカチ』などの裕次郎もの、さらには『こんにちは赤ちゃん』『大巨獣ガッパ』『ハレンチ学園』など、100本以上を書いた。後年はTVに舞台を移し、『プレイガール』『遠山の金さん捕物帳』『大江戸捜査網』など、とにかく娯楽シナリオを書かせたら右に出るものなき職人だった。
 そんな巌さんが、後年、小説を書くようになり、わたしが担当編集者になった。

 1990年代初頭、オーディオ音声ドラマ(カセット)で、ピーター・シェファーの『アマデウス』を制作することになったが、音声ドラマ台本のいい書き手が見つからず、困っていた。音声ドラマとは、耳で聴くものなので、映像台本とはちがった技法を要するのだ。
 あるとき、巌さんと食事しながら、その話をしたら、「それ、ボクに書かせてくれませんか」という。びっくりした。
 たちまち、夜霧にむせぶ横浜港が思い浮かんだ……。

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