【コラム】富樫鉄火のグル新 第234回 【古本書評】 岩城宏之『オーケストラの職人たち』ほか

 自宅のそばに、おいしい創作風のイタリア料理店があり、ときどき行く。
 しばらく前のことになるが、店長から、「今度入った、新人のスタッフです」と、小柄で美しいお嬢さんを紹介された。なんと、「彼女、岩城宏之さんの、お孫さんなんですよ」。

 わたしは、岩城宏之さん(1932~2006)のコンサートは中学生時代から行っていた。1970~80年代には「題名のない音楽会」の公開録画に10年ほど通い、その間、ゲストとして登場したのを、何度も見聴きした。だから、とても親しみをおぼえる指揮者だ。

 岩城さんが、東京佼成ウインドオーケストラの定期公演を初めて指揮したのは、1998年のことだった。曲目は、《トーンプレロマス55》を中心とする、盟友・黛敏郎の吹奏楽曲(管打アンサンブル曲)集だった。CD録音も行なわれ、翌年の文化庁芸術祭で、レコード部門優秀賞を受賞した。その間、インタビューや、受賞記念パーティーで何度か話をうかがった。
 このとき、岩城さんはTKWOのアンサンブル力の高さに感動し、「このような世界一の演奏団体が存在していたのを知らなかった不明を、恥ずかしいと思った」とまで書いた。わたしとの会話でも「せひ、また指揮したいですよ。今度は武満さんなんか、どうかなあ」とうれしそうに話していた(それは、2004年に実現する)。

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