【コラム】富樫鉄火のグル新 第232回 安重根と朴烈

 日韓関係が何かと話題になっているこの時期に、日本側に逮捕された朝鮮人死刑囚を描く作品が2作、映画と舞台に同時に登場した。

 まずは、文学座公演『寒花』(鐘下辰男:作、西川信廣:演出/3月4~12日、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて)。1997年に文学座アトリエ公演で初演された名作の再演である。

 明治末期。真冬の旅順の監獄。伊藤博文を暗殺した安重根(瀬戸口郁)が収監され、死刑の執行を待っている。監獄長、看守長、外務省官僚、監獄医など、様々な立場の日本人が登場し、安重根の処遇をめぐって対立する。維新時に賊軍扱いされたもの、世が世ならこんなところで働いているはずはない旧士族……中でももっとも接触が多い通訳の楠木(佐川和正)は、安重根のあまりに落ち着いた、そして、自らの死をキリストの磔刑と重ねあわせる姿に動揺と衝撃をおぼえる(安重根はクリスチャン)。楠木は兄を日露戦争で失っており、残された母親はそのショックで半ば錯乱状態である。
 その母親と安重根が抱きあうクライマックスは、忘れがたい名場面となった。

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