狂言の世界を題材にした、ユニークな映画が公開されている。題を『よあけの焚き火』という。監督は、小栗康平の監督助手などをつとめ、工芸技術の記録映画などを撮ってきた、土井康一。これが劇映画デビューらしい。
主人公は、能楽師大藏流狂言方の大藏基誠(1979~)と、10歳の長男・大藏康誠(2008~)。650年以上の歴史をもつ狂言方の家で、基誠は、二十五世宗家大藏彌右衛門の次男である。
映画は、この父子の稽古と日常を描く/演じるものだ。なぜ「描く/演じる」なんて妙な書き方をしたのかというと、この映画は、ドラマとドキュメンタリがない交ぜになった、不思議な構成なのである。