以前、本コラムの新年第一弾は「紅白雑感」と決まっていて、(ほんの数人だが)楽しみにしてくれている読者の方もいたのだが、結局、毎年、おなじことばかり書くハメになり(曲も歌手も大半は知らないとか、抱き合わせ企画ばかりで不愉快だとか)、しばらく、やめていた。
だが、今回は、少しばかり思うところがあるので、ひさしぶりに、書きとめておくことにした。
東京五輪の前年、1963(昭和38)年の紅白歌合戦で、白組のトリ(三波春夫)の前をつとめたのが植木等だった。
曲は《どうしてこんなにもてるんだろう》《ホンダラ行進曲》のメドレーで、クレージーのメンバーとともに、ドンチャン騒ぎを繰り広げた。
この年の平均視聴率は、89.8%(ニールセン)を記録した。まさに植木等は「昭和のお祭り男」であった。
その植木が、1990(平成2)年、リバイバル・ヒットで20数年ぶりに紅白に出場し、《スーダラ伝説》をうたった。そして、個人別視聴率でトップの56.6%を獲得した。
植木等は、昭和から平成に橋をかけた視聴率男でもあった。
昨年末の紅白歌合戦は、「平成最後」が強調されていた。
ところが、観終わって感じたのは「昭和の残響」だった。
いうまでもなく、ラストで大暴れした桑田佳祐(62)、ユーミン(64)のせいである。