【コラム】富樫鉄火のグル新 第219回 松平頼曉のオペラ

松平頼曉(1931~)のオペラ《The Provocators~挑発者たち》初演を観た。すでにかなりの部分が2008年にはできていたものの、なかなか初演の機会がなかったのを、音楽批評・プロデューサーの石塚潤一氏をはじめとする企画グループ「TRANSIENT」が舞台に乗せた。

歌手は5人(女声2、男声3。指揮:杉山洋一)。ただし、ピアノ・リダクション版(本来は、小管弦楽版。編曲:小内將人)、コンサート形式である。それでも、舞台上にはイメージ静止画と字幕が投影され、歌手は簡単な動きを伴って小道具も使用する。英語歌詞、台本も作曲者自身。

わたしは、松平頼曉作品は、数えるほどしか聴いたことがないので、このオペラが、松平作品の系譜のなかで、どのような位置をしめるのか、また、どのような意義があるのか、たいしたことはいえない。なのに、なぜ行ったのかというと、拙い経験ながら、松平音楽は、なにかを「表現」しているとか、「あらわしている」とか、そういうこととは無縁の、無機質な、「様式」が先行する、孤高の音世界だと思っており(そもそもご本人は生物物理学者、理学博士である)、そういう音楽を書いてきたひとが、情感や物語表現が基盤になるはずの「オペラ」を書くとは夢にも思わず、いったいどうなるのか、たいへん興味があったからである。

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