【コラム】富樫鉄火のグル新 第217回 書評『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』

すでにかなりの絶賛書評が出ているうえ、増刷にもなっているようなので、いまさらの感もあるのだが、やはり、小欄でもご紹介しておきたい。

ベートーヴェンの弟子・秘書に、ヴァオリニストでもあったアントン・シンドラー(1795~1864)なる男がいたことは、ご存知の方も多いと思う。世界初の楽聖の伝記を著したことでも有名だ。後年のひとびとが知るベートーヴェン像の多くは、彼の証言によるところが大きい。

だが、いまでは、その多くが信用できず、かなりの問題人物だったということになっている。彼が記した、「運命はこのように扉をたたくのだ」(交響曲第5番の冒頭部について)、「シェイクスピアの『テンペスト』を読みたまえ」(ピアノ・ソナタ第17番について)などの楽聖の発言は創作だったらしい。メイナード・ソロモンの大著『ベートーヴェン』でも、こっぴどく書かれていた記憶がある。

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