【コラム】富樫鉄火のグル新 第214回 手塚治虫 生誕90周年

1988年9月、ミラノ・スカラ座の来日公演があり、NHKホールで、プッチーニの《トゥーランドット》を観た(ロリン・マゼール指揮、フランコ・ゼッフィレッリ演出)。

第1幕後の幕間に、ロビーを歩いていたら、隅のほうに、手塚治虫先生がポツンと立っていた。驚いた。そのころ、先生は、体調を崩して入院中だと聞いていたからだ(あとで公表されるのだが、胃ガンだった)。

わたしは、先生の生前に、著書や作品の担当をしたことはないが、対談やインタビューで何度かお世話になっていた。しかも、出版編集の仕事に興味を持つようになった、おおもとのきっかけを与えてくださった方である。よく「漫画の神様」と称されるが、私自身にとっても神様のような方だった。

わたしはすぐに走り寄って、あいさつをした。顔色も暗く、やせて、なんとなく呆然としているように見えた。顔もひとまわり小さくなり、ベレー帽がゆるそうだった。これほどの方が、まわりに誰もいなくて、ひとりでポツンと立っているのも不思議だった。

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