■九州管楽合奏団演奏会2018レポート…2年ぶりにデメイが指揮者として登場! 日本初演を含む全曲デメイ作品の熱いステージに、会場も大熱狂!

チラシ裏面

【日時】2018年5月13日(日)14:00開演
【会場】福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
【指揮】ヨハン・デ・メイ(首席客演指揮者)
【トロンボーン】ユルゲン・ファン・ライエン、阿部竜之介
【共演】福岡工業大学吹奏楽団ブラスセクション
【レポート】BP特派員

九州のフリーの演奏家によって2004年に結成され、宗像ユリックスを本拠地として九州を中心に各地で演奏活動を行っている九州管楽合奏団の演奏会が今年も5月13日に開催されました。

2015年から首席客演指揮者を務めるヨハン・デ・メイが2年ぶりに登場し、全曲デ・メイの作編曲で、全5曲中3曲が日本初演という意欲的なプログラム。しかも、地元福岡のクレモナ楽器の創業40周年記念事業の一環として、名門ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席奏者ユルゲン・ファン・ライエンと、ヨーロッパ各地のオーケストラや吹奏楽団をトロンボーンとユーフォニアムで渡り歩いた実力派、大阪交響楽団首席奏者の阿部竜之介の2人をトロンボーン独奏に迎えるという豪華な演奏会でした。

前売り券の販売数が予想を大きく超え、使用しない予定だった3階席も自由席として開放することにしたり、印刷したプログラムが手違いで直前まで届かなかったり、ちょうど演奏会開演頃が大雨という天気予報に気を揉みながら舞台裏で事務局が走り回る一方で、ほぼ満員のホールは開演前から熱気にあふれていました。

演奏会のオープニングを飾ったのは日本初演のサンマルコのこだま。アンサンブル・コンテストでもよく演奏されたジョヴァンニ・ガブリエリの「第7旋法による8声のカンツォン」が素材として用いられているこの曲は、福岡工業大学吹奏楽団のブラスセクションが加わった8人の金管楽器が左右のバルコニー席から吹き鳴らすと、ステージの各セクションがエコーのように呼応して、音の伽藍を構築していきます。響きのよいホールだけに、まるでヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂で聞いているかのような気分に。

そして、お待ちかね、「Twoボーンコンチェルト」の日本初演。最初のトロンボーン協奏曲はTボーン協奏曲、ユーフォニアム協奏曲は「UFO協奏曲」、そして2本のトロンボーンをフィーチャーしたから「Twoボーン協奏曲」って…。題名はさておき、元々はファン・ライエンと、ニューヨーク・フィルハーモニックの首席奏者ジョゼフ・アレッシという2人の世界的名手のために(頼まれもしないのに)書いただけに、求められるテクニックも半端ない。一般的な二重協奏曲のように指揮者の横に2人並んで吹くだけでなく、向かい合ってほとんどベルを合わせるように演奏したり、スチールパン、コンガ、カホンのリズムに乗って吹きながらステージの左右に分かれたりと、見どころも満載。ファン・ライエンの演奏はもちろん言うまでもないですが、2番ソロ・トロンボーンとして時には前面に出て1番ソロと対決し、時には包み込むように1番を支える阿部竜之介の技が光っていました。

休憩を挟んで後半は交響詩「夏」から。北欧の民俗音楽と四季をテーマにした連作交響詩の2曲目にあたるもので、スウェーデン民謡を基にした「春」に続き、「夏」ではフィンランド民謡が使われています。フィンランドの吹奏楽コンクールの課題曲として作曲されたもので、出版されているスコアの表紙にはヒマワリが描かれていますが、シベリウスの交響曲も引用されているこの曲を聞いていて、太陽が輝く南欧や湿度の高いムシムシした日本の夏ではなく、何となくヒンヤリとした冷たい空気を感じたのはきっと私だけではないはず。

再びファン・ライエンが登場して、トロンボーン独奏と吹奏楽による、箸休めにはもったいないドビュッシーの「月の光」が美しく奏でられた後は、演奏会のメインでこれも日本初演となる「フィフティ・シェイズ・オブ・E」。出てきた旋律を聞いて「ん? … あっ!」。ファンファーレバンド(吹奏楽の金管・打楽器にサクソフォーンと多くのフリューゲルホーンが加わったような、オランダやベルギーで盛んな合奏形態)のために2009年に作曲した「エヴォリューション」を、吹奏楽用に改訂・編曲したものだったのです。原曲のタイトルどおり主題や断片的なモチーフが次々に展開していき、壮麗な響きで締めくくられました。

盛大な拍手に応えてアンコールに演奏されたのは、ビゼーの歌劇「真珠採り」から、第1幕のテノールとバリトンによる二重唱「聖なる神殿の奥深く」。デ・メイは「Twoボーン協奏曲」のアンコール用に編曲したそうで、再びソリスト2人が登場して心に染みるような美しい旋律を歌いあげました。

アンコールの2曲目というところで、ステージの前に並べられた譜面台は8台。ソリストの2人に続いて、デメイが指揮棒を持っ…えっ、持っているのはトロンボーン!? どよめく聴衆におどけながら、始まったのはヘンリー・フィルモアの「シャウティン・ライザ・トロンボーン」でした。トロンボーン・セクションをフィーチャーした楽しい曲ですが、ソリストの2人、九管のメンバー4人、福岡工業大学吹奏楽団の4人のトロンボーン奏者に混じって、かつてはプロのトロンボーン奏者として活躍したデ・メイもノリノリで指揮をしながら演奏し、大盛り上がりで演奏会の幕を閉じたのでした。

終演後にロビーで行われたサイン会には、ファン・ライエン、デ・メイ、阿部竜之介の3人が並び、CDやプログラム、楽器のケースにサインをもらったり写真撮影したり。千葉から聞きに来て、卒業後はファン・ライエンに習いたいと直接交渉していた大学生や、2年前の演奏会にも来ていて「今日は奥様は一緒にはいらっしゃらなかったのですね」と言いながら嬉しそうに一緒に写真を撮るご婦人方など、様々な会話が交わされるアットホームな雰囲気のひと時となりました。

【プログラム】
作曲/編曲:ヨハン・デ・メイ
・サンマルコのこだま(日本初演)
(共演:福岡工業大学吹奏楽団ブラスセクション)
・Twoボーンコンチェルト(日本初演)
(トロンボーン:ユルゲン・ファン・ライエン、阿部竜之介)

・交響詩「夏」
・ドビュッシー:月の光
(トロンボーン:ユルゲン・ファン・ライエン)
・フィフティ・シェイズ・オブ・E(日本初演)

アンコール
・ビゼー:歌劇「真珠採り」から「聖なる神殿の奥深く」
(トロンボーン:ユルゲン・ファン・ライエン、阿部竜之介)
・フィルモア:シャウティン・ライザ・トロンボーン

【楽団ホームページ】
http://www.kyushu-wo.com/

(文中敬称略)

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