こいつは、すごい!!!
イングランドの名門ブラスバンド、フォーデンズの人気者、プリンシパル・ユーフォ二アム奏者のグリン・ウィリアムズが、こともあろうに、ソプラノ・コルネットからテューバ(Ebバス)まで、ブラスバンドで使われる楽器を吹きまくる、なんともスーパーな企画盤!
それも、ただ吹きまくるというイタズラ企画ではなく、各楽器の有名なソロ曲を、コルネット曲ならコルネットを、フリューゲル曲ならフリューゲルを使って独奏するという、俄かには信じがたいアルバムなのだ!
商業CDを作っている正しいレコード会社なら、こういう野心あふれる冒険企画は、間違いなく“速攻”でボツ!
しかし、グリン・ウィリアムズの並々ならぬ実力と、その演奏活動を支える楽器メーカーや作曲家たちのサポートを受け、このアルバムは完全なインディーズとして完成した!
アルバムは、“本職”のユーフォニアム独奏、ジョン・ハートマンの『ルール・ブリタニア』でスタート。ヘルマン・ベルシュテッド『ナポリ』、アーサー・レミントン編『ヴェニスの謝肉祭』、ウェールズの名曲『マヴァニュイ』、ピーター・グレイアム『ホーリー・ウェル』といった、ぜひともウィリアムズのソロで聴いてみたいユーフォニアム独奏曲の合間に他の楽器を使った演奏をはさみ込むスタイルで進行!
日本でも大ヒットした映画「ブラス」(Brassed Off!)と同じアレンジが使われた『アランフェス協奏曲』から“アダージョ”は映画と同じくフリューゲルホーンで、ゴフ・リチャーズがヒュー・ナッシュの筆名で書いた『デメルザ』はテナーホーンで、二ール・セダカの『ソリティア』はソプラノ・コルネットで、ウィリアム・リンマー『ヘイルストーム』はコルネットで、ロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」から“私は町のなんでも屋”はEbバスで、ビゼーの歌劇『カルメン』(スネル編)から“花の歌”はバリトンで、といった調子でこだわりのレパートリーが演奏されていく。
しかも、“本職”のプレイヤーが真っ青になりそうな完成度!
ふつう1種類の楽器をものにするだけでも大変だというのに、なんということだ!!
アルバムにはウィリアムズのボーカル(これがなんとも美声!)まで入っているが、そんな中、アレッド・ウィリアムズとの兄弟ユーフォニアム・デュオのウェールズ聖歌『清き心』で、ウェールズが生んだユーフォ・デュオの元祖“チャイルズ・ブラザーズ”をリスペクトしているあたり、とても心憎い演出だ!
しかし、アルバムの興奮はこれで終わらない!
アラン・ファーニーが“ブラス・イン・コンサート選手権2001”のために書き、グリン・ウィリアムズが“ベスト・ソロイスト賞”を贈られた『クルトワ・ショーケース』では、ユーフォニアム、コルネット、テナーホーン、トロンボーン、フリューゲルホーン、バリトンといった楽器をとっ変え、ひっ変えの大熱演!映像がないので確証はないが、最後のシロフォンも恐らくウィリアムズが弾いたのではないかと思われるそのライヴ感は、実に爽快!
フィナーレを飾る『ランド・オブ・ソング(歌の国)』は、同じくファーニーがウェールズの有名なメロディーを使ってこのアルバムのために書き下ろしたユーフォ二アム独奏曲で、ウィリアムズの実力がたっぷりと味わえる!
演奏内容はもとより、これ1枚でブラスバンドに使われるすべての楽器のソロを味わえるというすばらしいプレゼンテーションも光る!
ブラスバンドのビギナーからベテランまで理屈なく愉しめる1枚だ!
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http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-3249/
【グリン・ウィリアムズ】
ウェールズ中部のアベリストウィスに生まれる。叔父から音楽の手ほどきを受け、ウェールズのタウィン・シルヴァー、ロイヤル・オークリー、メナイ・ブリッジの各ブラスバンドのユーフォ二アム奏者をへて、マンチェスターのソルフォード大学に学ぶ。1995年、フォーデンズ・バンドのソロ・ユーフォ二アム奏者に就任した。