■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第114話 スパーク「宇宙の音楽」初演の興奮

▲チラシ – 第90回大阪市音楽団定期演奏会(2005年6月3日、ザ・シンフォニーホール)

▲プログラム – 第90回大阪市音楽団定期演奏会(同上)

▲同、演奏曲目

2004年(平成16年)7月、大阪市音楽団(市音 / 現Osaka Shion Wind Orchestra)は、その後、翌2005年6月3日(金)にザ・シンフォニーホールで行なわれることが確定する“第90回大阪市音楽団定期演奏会”で、イギリスの作曲家フィリップ・スパーク(Philip Sparke)の最新作『宇宙の音楽(Music of the Spheres)』のウィンドオーケストラ版の世界初演を行なう意思を固めた。

決定に到るプロセスは、《第107話 スパーク「宇宙の音楽」との出会い》や《第111話 スパーク「宇宙の音楽」の迷走》でお話ししたとおりだ。

原曲は、サクソルン属金管楽器を主体に構成されるブラスバンド編成の作品で、委嘱者であるデヴィッド・キング(David King)指揮、ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド(Yorkshire Building Society Band)の圧倒的なパフォーマンスで、ヨーロッパで驚異的な成功を収めていた。

とは言え、当時は、その原曲すら未出版の段階。いくら作曲者から提案されたとは言え、それがウィンドオーケストラ作品として作り変えられたとき、実際にはどんなオーケストレーションが施されるのか、まったく想像がつかない中での意思決定だった!

その根底には、ここまでフィリップの作品の日本初演を数多く手がけてきた市音とフィリップの間で積み重ねてきたゆるぎない信頼関係があった。

別の視点から振り返ると、同時点において、ウィンドオーケストラ版の音符は、まだ五線譜の上に一音も記されておらず、地球上には、すぐ参照できるいかなる録音物も存在しなかった。

オリジナルのブラスバンド版スコアを読みきった延原弘明さんをリーダーとする市音プログラム編成委員の面々には、大いなる敬意を表したい。

どんな作品にも好き嫌いはある。或いは、作品誕生後、時(とき)の淘汰を経て、それが100年、200年先にまだ支持を得ているかは、現世の誰にも判らない。

名匠と謳われるベートーヴェンやモーツァルトの作品だって同じだ。

しかし、作曲家と同じ時間を共有する同じ時代の演奏家が生み出される作品を全くリスペクトしようとせず、世に問うことを怠るようなことが仮にあるとするなら、間違いなく、そんなジャンルに未来は無い!

結果が出たから、或いは原曲スコアを見た筆者が推したから言うのではない。

このときの市音の決定は、ウィンド・ミュージックの大きなムーブメントの中にあって、未来永劫語り継がれるべき、燦然と輝く一里塚になったように思う。

話をもとに戻そう。

延原さんから電話で“市音の意思”を伝えられた筆者は、即刻それをフィリップに伝えた。その時、『ワォーッ!!すばらしいニュースをありがとう!!』とすぐ打ち返してきたフィリップの喜びようは、もう大変!!

それはそれはアツいものだった!!

こうして、『宇宙の音楽』ウィンドオーケストラ版は、作曲者の高いモチベーションのもとで新たなオーケストレーションが施され、この世に送り出されることになった。

2004年夏に始まったオーケストレーションは、秋の始め頃にはスコアを完成。その後に仕上げられたパート譜とともに、同年末のシカゴのミッドウェスト・クリニックで、渡米した市音プログラム委に直接手渡された。

一方で、指揮者は、山下一史さんに決定!!

ここまで来れば、もう大丈夫!!

あとは、演奏会の日を心待ちにするだけとなった。

だが、その内、延原さんからしばしば“市音のブラック(黒)・スクリーン(幕)”と呼ばれた当時の筆者の脳裏に、ふつふつとある想いが浮かんできた。

『宇宙の音楽』ウィンドオーケストラ版を“無償”で書いてくれたフィリップに、なんとかその労苦を報い、それが世界初演される瞬間を聴かせてやることができないものだろうか、と。

しかし、相手は2年半先まで委嘱作の約束でスケジュールが埋まっている超多忙な作曲家だ。そんな瞬間的な閃きに構ってくれるかどうかはまったく分からない。

それでも筆者は、いつものように無茶振りのメールを送った。

『前にも言ったと思うが、ボクは、心の底から今度の作品はキミの最高傑作だと思う。そして、ボクは、その新しいバージョンが初めて世に出る瞬間、キミはその場に立ち会っているべきだと考えるんだ!!おいでよ!』と。

このメールには、さすがのフィリップも相当面喰ったようだった。

しかし、やりとりを繰り返す内、互いのスケジュールを摺り合わせ、彼に日本国内での仕事をひとつ依頼することで、この計画は実現の運びとなった。もちろん、渡航費は仕事のクライアントである筆者持ち。実はこの時、どうしても、彼の棒(指揮)で録音しておきたい曲が1曲あったのだ。

ただ、いたずら好きのふたりは、演奏会の練習が始まる少し前まで、彼の来日を市音には知らせないで、サプライズにしようと決めた!

そして、運命の2005年6月3日。ホールでゲネを聴かせていただいたとき、クライマックス近くで降り注いできた魂を揺さぶるようなサウンドに、なぜか頬を伝って涙がこぼれ落ちた。もう訳が分からない。フィリップには、肩をポンポンと叩きながら、“コングラチュレーションズ(おめでとう)”と言うのがやっとだった!

また、客席には、1998年から2001年まで団長をつとめた龍城弘人さんなど、市音OBの顔も結構見られた。そして、こちらが何か特別なことをした訳でもないのに、『ありがとう!ありがとう!ええ曲やなぁ(いい曲だなぁ)!』とつぎつぎ握手を求められた。

『練習が聞こえてきたとき、本当に“宇宙が見えた”ような気がした瞬間がありました。ホンマでっせ!(本当ですよ!)』と言ったのは、元副団長の多賀井 英夫さんだった。

何かが降臨していた。

本番でも、モチベーション全開の市音は、客席で聴くフィリップが、しばらくの間、身震いが停まらないくらい感動的な演奏を叩き出した!!

初演後、ステージに呼び上げられたときも、彼は興奮状態!

普通の日本人には聞き取れないほど超高速の英語で聴衆に挨拶し、楽屋に戻ってからも、人に聞かれるのも構わず、10分近くずっと、ブツブツと何かをつぶやいていた。

“信じられない、信じられない”と言いながら….。

あんなフィリップの姿は、後にも先にも見たことがない!!

▲CD – スパーク:宇宙の音楽<世界初演ライヴ>(CRYSTON、OVCC-00017、2005年)

OVCC-00017 – インレーカード

【コラム】富樫鉄火のグル新 第270回 映画『パラサイト』について

 韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が、米アカデミー作品賞ほかを受賞し、話題になっている。
 昨年、カンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞していたとあって、わたしは、封切早々に観た。そして、後味の悪い、なんとも嫌な気分になり、「こういう映画がカンヌで最高賞を取る時代になったのか」と、妙な思いにとらわれた。
 その後、米アカデミー賞の主要部門にノミネートされ、「脚本賞や国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)の可能性はあるかもしれないが、作品賞は無理だろう」と思っていた。ところが、それらすべてを受賞し、監督賞まで受賞した。
 どうやら、わたしの見方は誤っており、作品をちゃんと評価していなかったのだと反省した。
 しかし、どうも納得できなかったので、鑑賞済みの知人(韓国映画のファン)に、わたしの感想を話してみた。すると意外なことに、「実は、わたしもそう思っていた。あまりに評判がいいので、口にしにくかった」とのことだった。
 そこで、嘲笑されるのを覚悟で、書きとめておく。

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■BINGO WINDS 16th ファミリーコンサート(5月17日)

恒例となりました、BINGO WINDSのファミリーコンサート開催です!
幅広い方々に気軽に足を運んでいただき音楽の楽しさや吹奏楽の魅力をお届けしたいと、定期的にファミリーコンサートを続けています。小さなお子様も一緒に、周りを気にすることなく演奏会を楽しんで頂けたらと思います。

日時 : 2020年5月17日(日) 開場 14:00 、開演 14:30
会場 : 福山市西部市民センター ホール
交通手段 : JR山陽本線 松永駅
料金 : 入場無料
曲目 : ・フローレンティナー行進曲
・アパラチアン序曲
・アンパンマンたいそう
・ジャパニーズ・グラフティ 坂本九メモリアル
 など
問合せ :

担当者BINGO WINDS 事務局
TEL08029371999
E-Mailf.bingo.winds@gmail.com
HomePagehttp://www.bingo-winds.jp/

■新宿区吹奏楽団 第31回定期演奏会(4月19日)

東京都新宿区で活動している一般吹奏楽団
『新宿区吹奏楽団』の定期演奏会のご案内です。

お忙しい中とは存じますが、
皆様お誘い合わせの上是非ご来場下さい。
団員一同、心よりお待ちしております。

日時 : 2020年4月19日(日) 開場 13:00 、開演 13:30
会場 : 新宿文化センター・大ホール
交通手段 : 「新宿駅」東口より徒歩15分
「新宿三丁目駅」E1出口より徒歩7分
「東新宿駅」A3出口より徒歩5分
「西武新宿駅」より徒歩15分

会場には一般来館用の駐車場はございません。付近にコインパーキングがございますので、そちらをご利用下さい。
料金 : 入場無料。当日、直接会場へお越しください。
曲目 : ★1部 招待演奏★
 新宿区立新宿西戸山中学校 吹奏楽部
 顧問:戸張 ふき子

★2部 シンフォニック ステージ★
・マゼランの未知なる大陸への挑戦/樽屋 雅徳
・さくらのうた/福田 洋介
・天国の島/佐藤 博昭
・バンドのためのシンフォニック・ソング/R.R.ベネット 

★3部 ポップス ステージ★
・ハリウッド・マイルストーンズ
・スペイン
・ワルツ・フォー・デビー
・メモリーズ・オブ・ヘンリー・マンシーニ
・刑事ドラマ・テーマ集


主催:新宿区吹奏楽団
後援:新宿区、新宿区教育委員会
協力:公益財団法人 新宿未来創造財団
問合せ :

担当者新宿区吹奏楽団(大津)
TEL090-2244-6477
E-Mailshinjuku-inf@doremi.or.jp
HomePagehttp://www.doremi.or.jp/shinjuku/

■幕張総合高校&ウルスラ英智高校 ジョイントコンサートin郡山(3月28日)

千葉県立幕張総合高校シンフォニックオーケストラ部と聖ウルスラ学院英智高等学校吹奏楽部のジョイントコンサートを福島県郡山市で開催します。

日時 : 2020年3月28日(土) 開場 13:15 、開演 14:00
会場 : けんしん郡山文化センター (福島県郡山市)
交通手段 : 郡山駅から車で3分(約1.3キロ)
料金 : 600円(全席自由)
曲目 : バレエ音楽「白鳥の湖」より(幕張総合)
ブリュッセル・レクイエム (ウルスラ)
交響詩「ローマの松」よりⅣ:アッピア街道の松 (合同)
宝島 (合同)  他
問合せ :

担当者聖ウルスラ学院英智高等学校(担当:及川)
TEL022-286-3557
E-Mailoikawa@st-ursula.ac.jp
HomePagehttp://ursulawindorchestra.jp/

■四日市吹奏楽団 第41回定期演奏会(4月12日)

四日市吹奏楽団が久しぶりに四日市に戻ってきました。
今年は四日市市文化会館で定期演奏会を開催します。
2部構成となっており、第1部は吹奏楽のために作曲された曲や、誰もが耳馴染みのあるポップス曲などを演奏します。
第2部は「オリンピック」をテーマにし、関連するあの曲やこの曲を演奏します。
音楽を聴いて、一足早くオリンピックとパラリンピックの選手を応援するために気分を高めていきましょう!

日時 : 2020年4月12日(日) 開場 13:30 、開演 14:00
会場 : 四日市市文化会館第2ホール(三重県)
交通手段 : 近鉄四日市駅より徒歩10分

料金 : 一般当日1000円 中高生当日700円 前売あり
曲目 : ドラゴンクエストⅢよりそして伝説へ
カーペンターズ・フォーエバー
トゥーランドット
オリンピックファンファーレ
パリのアメリカ人
パプリカ 他
問合せ :

担当者四日市吹奏楽団
E-Mailysb-info@ysb-shisui.sakura.ne.jp
HomePagehttps://ysb-shisui.sakura.ne.jp/index/

■川崎市立高津中学校吹奏楽部 Spring Concert(3月21日)

今年度はディズニードリーマーズ・オン・ステージに出演、川崎吹奏楽コンクール金賞、神奈川県吹奏楽コンクール金賞、東関東吹奏楽コンクール銅賞を受賞することができました。今年度の集大成としてスプリングコンサートをすくらむ21で行います。曲目は、祈りの手(東関東吹奏楽コンクール演奏曲)、ノートルダムの鐘、ポップスステージ他です。ぜひ、聴きに来てください。

日時 : 2020年3月21日(土) 開場 14:00 、開演 14:30
会場 : すくらむ21 大ホール
交通手段 : JR武蔵溝ノ口駅・東急溝の口駅より徒歩10分
(お車でのご来場はご遠慮ください)
料金 : 入場無料・全席自由
曲目 : 祈りの手 田村修平作曲
(東関東吹奏楽コンクール銅賞受賞曲)
ノートルダムの鐘 A.メンケン作曲
ポップスステージ 他

問合せ :

担当者川崎市立高津中学校吹奏楽部 顧問 飯島・北村
TEL044-822-2331
E-Mailmihoeno1012@gmail.com
HomePagehttps://www.concertsquare.jp/blog/2020/202002076.html

■岐阜県立斐太高等学校吹奏楽部 第37回定期演奏会(3月22日)

ドラマ白線流しのモデルになった岐阜県高山市にある斐太高等学校。第37回の今回はグレイアム作曲の巨人の肩に乗ってを取り上げます。
第2部ではアラジンメドレー、ラプンツェルメドレーを始めとしたアラン・メンケンスペシャル。そしてハウルの動く城、年末に大ヒットしたパプリカも演奏します。
情報は公式Facebook、Twitter、インスタグラムで配信中です。

日時 : 2020年3月22日(日) 開場 16:30 、開演 17:00
会場 : 高山市民文化会館大ホール
交通手段 : JR高山線高山駅白山口下車徒歩3分。駐車場多数あり。中部縦貫道高山IC下車15分。
料金 : 500円(自由席)
曲目 : オリンピックファンファーレとテーマ
G線上のアラビア
2020年全日本吹奏楽コンクール課題曲より
巨人の肩に乗って(ピーター・グレイアム)
アラジンメドレー
ラプンツェルメドレー
パプリカ
ハウルの動く城より 他

問合せ :

担当者岐阜県立斐太高等学校吹奏楽部 ヤマザキ
TEL0577-32-0075
FAX0577-32-9006
E-Mailp98063@gifu-net.ed.jp

■筑波研究学園都市吹奏楽団 午後の演奏会23 ~世代をつなぐメロディー(3月8日)

筑波研究学園都市吹奏楽団は、3月8日(日)茨城県牛久市中央生涯学習センター文化ホールにて、午後の演奏会23を開催します。
いろいろな世代の方に好まれている曲、子供たちに残していきたい曲等の中から、「世代をつなぐメロディー」と題して、幅広い年代の皆様が 一緒に楽しんでいただけるような曲を集めました。
小さなお子様も歓迎いたします。ぜひ皆様お誘いあわせの上ご来場ください。
皆様のご来場を、団員一同、心よりお待ちしております。

日時 : 2020年3月8日(日) 開場 13:30 、開演 14:00
会場 : 茨城県牛久市中央生涯学習センター文化ホール
交通手段 : 交通手段 :
自家用車の方:駐車場有
※台数567台(内 身障者、ハート・プラス用6台)

公共交通機関をご利用の方:最寄駅からバス有
※駅からバスをご利用の方は、コミュニティバス『かっぱ号』をご利用ください。
【運動公園ルート】
●牛久駅東口→中央生涯学習センター(約7分)
●ひたち野うしく駅東口→中央生涯学習センター(約20分)
料金 : 無料
曲目 : 「スター・ウォーズ」より
「アラジン」セレクション
パプリカ
加山雄三メドレー  ほか
問合せ :

担当者午後の演奏会23実行委員会
TEL080-4122-8231
E-Mailt-brass@jcom.home.ne.jp
HomePagehttp://toshibrass.music.coocan.jp/

■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第113話 アイリッシュ・ガーズがやってきた

▲チラシ – 英国近衛兵軍楽隊 アイリッシュ ガーズ〈訪日第2陣〉(1972年10月25日、大阪市中央体育館)]

▲プログラム – IRISH GUARDS 1972 IN JAPAN

▲「バンドジャーナル」1972年12月号(音楽之友社)

1972年(昭和47年)10月から11月の1ヶ月間、イギリスからアイリッシュ・ガーズ・バンド(The Band of the Irish Guards)が来日した!

来日時の音楽監督は、1968年に就任したエドモンド・G・ホラビン少佐(Major Edmund Gerald Horabin、1925~2008)。

バンドは、バッキンガム宮殿の衛兵交代でもおなじみの5つある“近衛兵軍楽隊”(当時は、各65名編成)の1つで、1952年、BBCのラジオ番組を通じて、パウル・ヒンデミット(Paul Hindemith)の『交響曲変ロ調(Symphony in Bb for Concert Band)』を国内初放送するなど、イギリスの音楽界ではその実力者ぶりはよく知られていた。

また、1966年に英EMIからリリースされ、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、日本など、各国でロングセラーとなったアルバム「マーチング・ウィズ・ザ・ビートルズ(Marching with the Beatles)」(英EMI-Columbia Studio 2、TWO125)が何週にもわたってヒット・チャートを賑わし、そのワールドワイドな大ヒットで、吹奏楽でセンスのいいポップスをお洒落に聴かせるバンドとして世界的人気を誇った。

第96話 スコッツ・ガーズと1812年》でお話した、2年前の1970年(昭和45年)に大阪・千里丘陵で開催された日本万国博覧会の“英国ナショナルデー”のために来日し、東京公演も行なったスコッツ・ガーズ・バンド(The Band of the Scots Guards)につづく、“英国近衛兵軍楽隊”の訪日第2陣である。

招聘元は、スコッツ・ガーズ東京公演を行なった東京・新宿のコンシエルタ。

プログラム掲載の公演日程は、以下のとおりだった。

・10月10日(祝) 東京:上野駅前パレード、日本橋パレード

・10月11日(水) 横浜:文化体育館

・10月12日(木) 東京:皇居・宮殿東庭

・10月13日(金) 川崎:市体育館

・10月14日(土) 東京:都体育館

・10月15日(日) 東京:都体育館

・10月16日(月) 宇都宮:栃木県体育館

・10月19日(木) 佐世保:市立体育館

・10月20日(金) 長崎:国際体育館

・10月21日(土) 熊本:市立体育館

・10月23日(月) 福岡:九電記念体育館

・10月24日(火) 北九州:新日鐵大谷体育館

・10月25日(水) 大阪:中央体育館

・10月26日(木) 京都:府立体育館

・10月27日(金) 富山:市体育館

・10月28日(土) 福山:市体育館

・10月30日(月) 広島:県立体育館

・10月31日(火) 姫路:厚生会館

・11月1日(水) 静岡:駿府会館

・11月2日(木) 名古屋:愛知県体育館

・11月3日(祝) 名古屋:愛知県体育館

・11月5日(日) 宇部:俵田翁記念体育館

・11月6日(月) 神戸:中央体育館

2019年(令和元年)に来日し、わずか1週間という短い滞日期間中に5回ものコンサートを行い、最終日には、ソロイストのひとりがリップ・アクシデントのため出演不能になったブラック・ダイク・バンド(Black Dyke Band)も“口アングリ”になってしまいそうなハード・スケジュールだ。(《第103話 ブラック・ダイク弾丸ツアー2019》参照)

大阪ネイティブの筆者が聴いたのは、もちろん、大阪市中央体育館で開催された10月25日の夜の部の公演だった。

鈴なりに近い中で披露された演奏は、とてもエキサイティングで、アイリッシュ・ガーズ・ファン待望の「マーチング・ウィズ・ザ・ビートルズ」からも、“ミッシェル(Michelle)”と“キャント・バイ・ミー・ラヴ(Can’t Buy Me Love)”の2曲が演奏され、“余は大満足じゃ!”とひとり御満悦!!

さすがは、ロンドンのミュージシャンたちだ!

レコードと寸分違わぬブリティッシュなサウンドとセンスのいいキリリとしたパフォーマンスに大感激した。

アイリッシュ・ガーズは、また、10月17日(火)午後3時から9時まで、ビクターの第1スタジオでレコーディングも行なった。

ちょうどレコード各社が競うように4チャンネルに取り組んでいた時期だったので、録音はスタジオ内に衝立を立ててセクションごとに音を拾うセパレーションのいいCD-4方式の4チャンネル録音!

互いの顔が見えないだけに、スタジオ慣れしているはずのアイリッシュ・ガーズの面々も面喰う、彼らにとっては未知の録音方式だった。(《第94話 エキスポ ’70と大失敗》参照)

他方、昔から頑なに“吹奏楽はマーチ”と思い込んでいるふしがあるビクターらしく、普段アイリッシュ・ガーズがどんなレパートリーを得意にしているかとか、公演曲目にどんな曲を準備してきたかについてはまるでお構いなしで無関心!

スタジオに用意された楽譜は、すべてマーチだった!

しかも、イギリス人である彼らが普段演奏する機会がないアメリカのジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa)の『星条旗よ永遠なれ( The Stars and Stripes Forever )』や『雷神(The Thunderer)』『ハイ・スクール・カデッツ(The High School Cadets)』『忠誠(Semper Fidelis)』、フランスのルイ・ガンヌ(Louis Ganne)の『勝利の父(Le Pere la Victoire)』、日本の瀬戸口藤吉の『軍艦マーチ』などをズラリと並べて….。

一方で、ビクターは、このとき、イギリスでリリースされたばかりの最新アルバム「At Ease with the Band of the Irish Guards」(英RCA Victor、LSA 3111)を来日記念盤「ポップス・イン・マーチ/アイリッシュ・ガーズ」(ビクター音楽産業(RCA)、RCA-5023)としてリリースしていた。

だが、ここで初来日のアイリッシュ・ガーズにわざわざお決まりのマーチをやってもらう必要が本当にあったのか。あるとすれば、4チャンネル録音のカタログ化の拡大だが、《第94話》でお話したように、それはアメリカのポール・ヨーダー(Paul Yoder)を指揮者として起用。多くのマーチがつぎつぎと録音されていた。

やはり、ビクターとしては“吹奏楽はマーチ”という呪縛(固定概念)から逃れられなかったのだろう。

また、公演のほとんどが、招聘側の希望で、アイリッシュ・ガーズが母国ではほとんどやらない体育館のフロアを使ったドリル形式のものとなった。一から準備し、特別に練習してきたのだという。しかし、公演各地では、逆に“なぜ、コンサートをやらないのか”という声が多く聞かれたという。

当然だろう!

帰国後にBBC放送のクラシック・チャンネルで演奏することになっていたのは、アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schonberg)の『主題と変奏、作品43a(Theme and Variations, Op.43a)』だった。

自信をもって実力バンドを送り込んできた英国側に対して、姿かたちの外見上のカッコ良さだけに目を奪われたような演芸路線の日本側。

皇居での御前演奏に際しては、当初“外国の軍隊が皇居に入ったことはないので、制服は脱いでお越しいただきたい”と言われたとの逸話もある。

何かが微妙にずれていた。

そして、その後発覚するのが、招聘元の倒産による演奏料の未払い!!

全員がミュージシャン・ユニオンに加入するプロの音楽家だけに、事は大問題となり、英国国防省が、“今後日本へのバンドの派遣を禁止する”と通達するほどの事態にまで発展した。

演奏は本当にすばらしかった。

公演を取り上げた「バンドジャーナル」1972年12月号(音楽之友社)も表紙だけでなく、カラー・グラビア2頁、モノクロ・グラビア6頁、記事3頁の大特集を組み、民放FM局も東京公演の模様をオンエアした。

しかし….。

あってはならない事件だった!

▲LP – On Guard(英MCA、CKPS 1004、1970年)

▲CKPS 1004 – A面レーベル

▲CKPS 1004 – B面レーベル

▲LP – At Ease with the Band of the Irish Guards(英RCA Victor、LSA 3111、1972年)

▲LSA 3111 – A面レーベル

▲LSA 3111 – B面レーベル

▲LP(4チャンネル) – Marches on Parade(ビクター音楽産業(RCA)、R4J-7018、1973年)

▲R4J-7018 – A面レーベル

▲R4J-7018 – B面レーベル

▲LP – 来日記念盤 ポップス・イン・マーチ/アイリッシュ・ガーズ(ビクター音楽産業(RCA)、RCA-5023、1972年)

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